表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼女とオオカミ男のお話  作者: 金剛陸奥
あくとⅠ  ちょっぴり怖くて意地悪なオオカミ男さん、お友達になりましょう
3/37

ちゃぷたーⅡ  幼女、オオカミの噂を耳にする



「行ってきまーす!」

「行ってきます」

「いってらっしゃーい」



 わたしの小学校はセシルさんの大学のちょっと手前にあるので、セシルさんとわたしはいつも手をつないで一緒に登校している。


 でも、なんでセシルさんは自転車で登校しないんだろう? お家から学校まではそこそこの距離があるのに、セシルさんはいつもわたしと一緒に歩いて大学に行く。大学も自転車登校禁止なのかなと最初は思ったけど、いつも途中ですれ違うセシルさんの大学のお友達は自転車に乗っている人がほとんどだ。



「ねえねえセシルさん」

「ん? なあに、真綾ちゃん」

「あのね、わたしもう4年生になったし心配してくれなくても大丈夫だよ?」

「何を?」

「は、はう。ご近所に友達住んでないからわたしが一人で登校するの危ないと思って一緒に歩いてくれてるんでしょ? 最近はね、先生たちがこの付近も立ってくれてるらしくて」



 だから先に行ってくれて大丈夫と続けようとしたけど、セシルさんがその場に急に立ち止まってわたしの手を強く握りしめた。ちょ、ちょっと痛いかな…。


 わたしの目線に合わせて屈んでくれた真剣な顔をしたセシルさんはちょっと怖かった。



「オレと一緒に登校するの、イヤ?」

「はう!? い、イヤな訳ないよ!!」

「でも、一人で行きたいんでしょ?」

「ち、違うよ! いっしょがいい!! …あ」

「…」



 セシルさんはわたしの顔をしばらくじっと見つめて黙っていた。けれどすぐにいつもの笑顔を見せてくれた。



「うん。オレも、真綾ちゃんといっしょがいいんだ」

「はう…」

「余計な気、使わなくていいよ」



 そしてそのまま立ちあがってわたしの手を引きセシルさんは再び歩き出した。


 握られたままだった手はさっきよりも少し強くて、でも、痛くはなかった。










「じゃあ真綾ちゃん。博士のところには先生がもう連絡入れてあるらしいから、オレが行くまでちゃんと待っててね」

「うん! 大学の授業サボっちゃだめだよ?」

「真綾ちゃんも、お昼食べて気持ち良くなって授業中寝ちゃだめだよ?」

「は、はう」



 小学校の校門の前でセシルさんと午後からの約束をしていると、後ろから自転車に乗った綺麗なお姉さんがわたしたちに近づいてきた。



「セシル、おはよう」

「あー…おはよ」

「早く行きましょ。新学期早々、遅刻するつもり?」

「り、凛さん!! おはようございます!」

「…おはよう、真綾ちゃん」



 このふわふわとした長髪の綺麗なお姉さんは、早瀬凛はやせりんさん!とってもとーってもクールな人で、女の人なのにすごくカッコいいの。凛さんはセシルさんとこの小学校前で待ち合わせして一緒に登校してるんだ。セシルさんと仲良しさんで、大学ではいつも一緒に居るらしい。勉強もスポーツも完ぺきで、大学では一番えらい会長をしてるんだって! いつかわたしも凛さんみたいなお姉さんになりたいなぁ。



「真綾ちゃん、お友達が呼んでるわ」

「はう! じゃあ行ってきます! 凛さん、また家に遊びに来てくださいね」



 学校の正面玄関でわたしを呼ぶ友達の声がしていたので、「今行くー!」と大きく返事をして、二人に挨拶をしてから友達のところに走った。


 だからわたしが居なくなったあと、二人がどんな会話をしてるかなんて、知らなかった。




「あのさー、凛」

「何よ」

「真綾ちゃんをさ、そういう目で見るのやめてくんない」

「…」


「お前、醜いよ」









 教室について自分の机にランドセルをおくと、お友達のかなんちゃんが声を掛けてくれた。



「まーやちゃん、おはよう」

「おはよ、かなんちゃん! …あっ、これ、かなんちゃんが読んでみたいって言ってた本。お父さんが小学生でも読める絵本になってるよって。貸してあげる!」

「え? …いいの?」

「もちろんだよー。わたしでも読めたからだいじょうぶだよ」

「ありがとう…。わざわざ探してくれたの?」

「…ハッ! よ、余計なお世話だった!?」

「…ううん。嬉しい。ありがとうまーやちゃん」



 ロミオとジュリエットの絵本をぎゅっと抱きしめて嬉しそうに笑ってくれたこの女の子は荒喜華南あらきかなんちゃん。すごく良い家柄のお嬢様らしいんだけど、なんだかいろいろと複雑な事情で決まりごとがいっぱいらしくて、自由に本を読んだり映画を見たりはあんまり出来ないらしいの。何が良くて何がダメなのか、かなんちゃんもよくわからないみたい。だから本当はダメかもしれないんだけど、こうやってこっそり一緒に同じ本を読んでるんだ。怒られる時は一緒に怒られるよって約束。だって、大事な大事なお友達だもん。




「ねえ、まーやちゃん。今日のニュース、見た?」

「はう? あっ、今日は午後から雷と雨らしいね! 怖いね!」

「それもなんだけど…。昨日の夜から、この近辺で出るらしいの」

「…お、おお、おば、おばけ…?」

「違うの。オオカミが出るんだって」

「はう? お、オオカミ?」

「うん。隣町に動物園があるでしょ? そこから逃げ出したんじゃないかって言われてたんだけど、今朝のニュースでは動物園から逃げ出した形跡はないんだって。ちゃんと頭数も揃ってるらしいの」



 じゃあ、そのオオカミはどこから来たんだろう。この近くに森はあるけど、オオカミが住んでるとは聞いたことないなあ。イノシシも出ないし…。せいぜいリスとか、ウサギとかたまに見るくらいで…。



「昨晩から、オオカミをこの辺で見たって人たちが居るらしくて、探し回ってるんだって。だから今日は絶対に一人で下校することのないようにって先生たちが言ってた。まーやちゃん、いつも一人で帰ってるから大丈夫かなって」

「そっかあ。…だいじょうぶ! 今日はセシルさんが迎えに来てくれるまで博士のところにお世話になるんだー」

「え? それならまーやちゃんも家の車で送ってもらうよう言っておくのに…」

「はう!? い、いいよいいよ! だいじょうぶ! それに、お父さんから博士へのお使いも頼まれてるんだー」



 そしてホームルームが始まって、新4年生としてのこれからについて先生のお話を聞いた後、いつも通りの授業が始まった。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ