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幼女とオオカミ男のお話  作者: 金剛陸奥
あくとⅢ  ちょっぴり怖くて意地悪なオオカミ男さん、お世話いたします
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ちゃぷたーⅠ  オオカミ男、変なオヤジに絡まれる



「あ。オヤジ! 何処行ってたんだよ。今日は大変だったんだぞ。ほら、これ! まあやちゃんから預かった書類。わざわざ届けに来てくれたよ」

「ハン。緊急の事態があッてもうワタシ引っ張りダコだったんデース!! さあタツーヤ!! 疲れ果てて今にも眠りに落ちそうなワタシのタメに、コーヒーを淹れナサイ!!! アト、今すぐ照り焼きチッキーン入りのサンドウィッチも!! シュガーは」

「5つだろ。人使いの荒いおっさんだよ全く」

「40秒で支度ナサイ!」



愛らしいアニマル達が集うペットショップの匂いは非常に芳しく、そしてそのニャンニャワンワンチューチューというメロディラインはズタズタのボロ雑巾の様に渇ききったワタシの心を癒した。ンン~、やはりアニマルはスバラシイ、ワンダホー。ワタシの枯渇した体をここまで潤すとは。キャバクラのオネエちゃん達のパフパフに匹敵シマス!!


我が息子が淹れたコーヒーに口をつけて一息ついていると、ワタシの可愛いアニマル達の匂いの中に違和感があった。そう、この匂いハ…――――。



「Hey!! タツーヤ!!」

「んだよ、俺まだ忙しいんだって」

「獣の臭いが紛れこんでマース!!!」

「あ? 獣?」



怪訝な顔をしたタツヤは暫く上を向いて考え込むと、何か思い当たる節があったのか「ああ!」と声を上げた。



「ウルフドッグのことか? つーかオヤジどんな鼻してんだよ。犬かよ」

「Wolf Dog!? こーんなデッカくて、真っ黒なBoy!?」

「ああ。そうだけど、何で知ってんだ」

「ハー!? ナゼオマエ、ワタシに連絡シナーイ!? アリエナクナーイ!? ホワーイ!!?」

「じゃあ携帯番号ぐらい教えとけよ」

「ワタシのケータイ番号知ってていいノハ! オネエちゃんだけでジューブン! むさ苦しいオトコは必要あっりまセーン!!」

「テレパシーでも送れってか!?」









ハー…。本当に使えない息子デス。何のためにワタシが今日奔走していたと思っているのか。まさに激おこぷんぷん丸デス!!


タツヤに伝えてもらった部屋に入ると、部屋に居る可愛いアニマル達が一匹の存在に対して可哀想にぷるぷると震えているのがわかった。それもその筈。見慣れない新入りが来たと思ったら、檻の中に居るのは―――なのだから。


コツコツとわざと足音を立てて、その存在が閉じ込められた檻に近付くと、低く唸る声が大きく聞こえてきた。オオウ、思っていたよりも手強そうな感じデスネー! ワタシの目の前でその鋭いキバを剥くのは、まさに今日ワタシがずっと探していた存在。



「はーじめマシテー! ワタシ、考古学者の「伊達正宗ダテマサムネ」デース!! 皆からは「は・か・せ」と、ハート付きで呼ばれていマース。よろしくお願いちょんまげダブルピース。ハハハ、何チャッテ」



きちんと自己紹介すると、何処に気分を害す要素があったのか思い切り吠えられた。アー、歯茎も牙も剥きだしでブサイクな顔しちゃってマアマア。


そのまま檻の中で暴れだしたせいで、ぐるぐるに巻かれた包帯から血が滲み出てきている。これはイケマセン。何とか落ち着かせなくてハ。



「ヘイボーイ。何も心配することはアリマセーン。ワタシは彼らの仲間ではアリマセン。そんなに醜く吠える必要もあッリマセーン! むしろワターシ、アナタの救世主デース!」



信じられるかとますます暴れだしてしまい、檻がガタガタと揺れる。その度にこのウルフドッグはただでさえ深く傷ついた身体を固い檻に叩きつけるので、全身打撲どころではなくなってしまう。ワタシはひとつため息をついて、どうしようかと考えていると、彼の足元にある赤いモノに見覚えがあった。そういえば、



『あ。オヤジ! 何処行ってたんだよ。今日は大変だったんだぞ。ほら、これまあやちゃんから預かった書類、わざわざ届けに来てくれたんだぞ』



…ハハーン。ヤッパリ、ワタシすごくジーニアス、天才デース!!!


彼を黙らせる方法をひとつ思いついた。今もなお暴れ続けるヤンチャな彼の前に座り込んで、それを口にした。



「大人しくシナイト!!! 真綾チャンに、アナタがオオカミ男であることをバラしちゃいマーーース!!! フーーー!!!」



それを叫んだ瞬間、この”オオカミ男”は面白いほどピタリと動きを止めた。ハン、口ほどにもないデース。









すっかり大人しくなったカレは、先ほどの勢いと迫力のある唸りは何処に行ったのか、まるで悪戯をして怒られたPuppyの様な鳴き声をあげて後ろ後ろへと下がってしまった。オット、ちょっと利きすぎマシタカ。まあいいでショウ。結果的にこれで落ち着いて話が出来マス。



「いいデスカー? さっきも言った通り、ワタシはチョー天才でクールでモッテモテな考古学者デス。ハウエヴァー!!! タダの考古学者ではナーイ。過去にアッたと判明している歴史を研究するのではナク、新しい歴史を発掘スル考古学者デース」

「…」

「ハン。言ってる意味がサッパリわからんという顔をしていマスネ。まあイイデショウ。本題はココからデス」



相手も落ち着いてきたのか、唸りもせずコチラをまっすぐに見つめて様子を伺っている。警戒心の強さは一級品である。



「アナタはコチラの世界でもッぱら有名デース。なんせ世界でタッタ一人の狼犬にも人間にもなれる男。ワタシと同じタイプの学者達は新たな歴史の開拓の為、アナタについて研究したくてしたくて仕方がなかッた。アーンド、探して探して見つけた結果!!!」

「…」

「既にアナタは彼等の手の内にあッた。これでは手が出せナイ!!」



「彼等」と口に出した瞬間、このPuppyは大きく身を震わせた。カレがあの場所でどういう扱いを受けてきたのかという報告は受けていたが、ワタシもそれを聞いた瞬間、あまりの不遇さに絶望と同情を覚えた。この男が受けた仕打ちは、生物学上としての人権もなければ、生き物としての尊厳に唾を吐き捨てられるようなものである。ずっと救い出してやりたいとは思っていたが、ワタシの権力を持ったとしても、ワタシ達から彼等に手を出すのは不可能だッた。


しかし、アチラから動きがあったとすれば、話しは別。よく彼等から逃げだしてくれマシタ。



「ヘイボーイ、アナタの身の安全はこの麗しきワーターシーが保障しまショウ」

「!!?」

「アハーン、せっかく自由になれたのに!! と主張したいのは分かりマスが、今ワタシの元を離れれば、確実にまた奴らに捕まりマスヨ」

「……」

「コチラとしてもアナタを彼等に奪われる訳にはいかないのデス。安心シナサイ。アナタはワタシの許す領域範囲、つまりこのジャッパーーンでこれまで味わえなかった自由を存分に享受すればイイデス。研究はアナタが近くに居てくれれば出来ますカーラー」



そして再び何が不満なのか、やはりワタシのことが信用出来ないのか彼は再び大きく暴れだした。注文の多いPuppyデスね。困ったチャンです。



「そーれーならーぶぁー!! 恐らく今現在、アナタが最も信頼に近い情を抱いている人物にアナタを頼むとシマショウ」

「…」

「アララ、自覚無しデスカ。しかし、その名を聞けばワタシよりマシだと納得するデショウ。その代わり、アナタにひとつの条件をクリアしてもらいマス」



ウルフドッグは怪訝な顔をして黙ったままだった。








「と、いうことデー、真綾チャン! 今日から真綾チャンが、あのボーイのご主人サマデース!! フー!!! オメデトウ、オメデトウ、コングラチュレーーーーショーーーン!!!」



博士はただただ楽しそうに手を叩いてくるくると高速回転しているのに対して、わたしは全く状況がつかめなくてその場に立ちつくしてしまった。はう? えっとつまり、…ん? 隣にいる達也さんは呆れて何も言えないと頭を抱えているし、明石屋のおじさんも頭上にはてなマークをぽんぽんと浮かべている。目の前に座るお父さんはいつものように相変わらず笑ったままだ。


すこし、時間をさかのぼってみよう。








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