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幼女とオオカミ男のお話  作者: 金剛陸奥
あくとⅢ  ちょっぴり怖くて意地悪なオオカミ男さん、お世話いたします
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ちゃぷたーⅡ  幼女、気を引き締める





「ふあぁ…。…はう?」



朝、まだ寝ているセシルさんの腕の中からセシルさんを起こさないようにそっと抜け出して、洗面所に顔を洗いに行って、なんとなく鏡を見ると唇がふやけていて、首元には赤い虫さされの様なものがいくつかあった。あ、あれぇ? や、やだなぁ、わたしよだれ垂らして寝てたのかな。あと虫さされ? あんまりは痒くはないんだけど、まあ四月だし気をつけなきゃ。


とにかく顔を洗ってシャキッとさせて、今日もウルフドッグさんの為にたくさん頑張らないと、と気持ちを切り替えた。軽くペシっと両頬を叩いて根気を注入し、日課であるお庭のお花にお水をあげに行った。


ふんふふーんと鼻歌を歌いながお花にお水をあげていると、後ろから名前を呼ばれたので何かと振り返ると、スーツを着たお父さんが「おはよう」とニコニコとわたしにあいさつした。



「おはよーお父さん! 気持ちのいいお天気だね!」

「うんうん、今日は一日快晴らしいよ。良かったね、まーや。…ところで、庭の主にお尋ねしたいんだけれど」

「はう?」

「これからお花を育てる予定の無いスペースはあるかな? 出来るだけ広い方がいいんだけど」

「? もう新しいお花の種は埋め終わったから、どこでもだいじょうぶだよ。何かするの?」

「ちょっと新しい試みをね。そうだなぁ、…ここなんか日当たりもいいし、庭の景色も綺麗に見える位置だ」



お父さんはお庭でぽかぽかと日が当たるスペースにしゃがみこんで、メジャーを取り出し念入りにスペースを計っていた。…新しい試みってなんだろう? お父さんは、何だかまるで楽しいイタズラかサプライズを計画しているみたいにウキウキと楽しそうだった。









学校の授業も全部終わって、かなんちゃん達とバイバイした後、わたしは急いで達也さんのペットショップに向かう途中でわたしは明石屋のおじさんに出会った。



「ん? なんやなんや~お嬢ちゃんやないかい! 小学校はもう終わったんか? あのお兄ちゃんはどうしたん?」

「明石屋のおじさん! こんにちは! 小学校はもう授業終わりましたー。セシルさんはまだもうちょっと大学で授業あるみたいなんで、先にお店に行っておく約束なんです」

「おッ。今日もあのワンワンの為にやる気やな~? オジサンもあの後お仕事しながらいろいろとご町内の皆さんにお話ししてみたんやけどな~…」



おじさんは照れ臭そうに笑ってぽりぽりと頬をかいて少し申し訳なさそうにしていた。



「小っさいワンワンか、大型犬でも子犬からなら飼ってあげられるって人はいっぱいおってんけど、やっぱりある程度でっかくなったワンワンでちょっと変わってるやろ? そうなるとちょっと皆自信ないみたいでなぁ…」

「わたしも…、学校で色んな人にウルフドッグさんのことを話して相談してみたんですけど、これがなかなか…」

「み、道のりは長いなあ…」

「は、はうう…」



少しどんよりとした空気が流れて、二人してちょっと沈んでしまったけれど、明石屋のおじさんは「よしっ!!!」と気合の入った声をあげた。お、おおう!!



「大丈夫や!! まだ一日目やし、これからが勝負どころやで! なーに、いざとなったら嫁と相談してウチであのワンワン面倒みたる!!」



あまりにも男気溢れる発言にわたしは思わず熱く感動してしまった。こ、この人の元でなら安心してあのウルフドッグさんを任せることができる…!!!



「あ、明石屋のおじさんんんん」

「あーあーええんやええんや! こういう時こそ大人の男がかっこいいとこ見せな! お嬢ちゃん惚れたアカンで!」

「うわああんありがとうございますうう!! と、とにかくまずはわたしにもやれることをやって全力を尽くします!」

「おう!!!」



そうして飼い主探しに再び根気を取り戻した明石屋のおじさんとわたしは、これからの作戦を話しあいながら明るい未来を想像して一緒にペットショップへと向かった。









「こんにちはー!」

「達也はーん! 今日も飼い主探しお手伝いしに来ましたで~」



いつもはお店の正面の扉から入るんだけど、今日は明石屋さんが達也さんから預かったというペットショップの裏口の鍵を使って、そのまま関係者のひとだけが入ることのできるお部屋に通してもらった。達也さんと約束した時間ぴったりに来たので、明石屋のおじさんとわたしは自分達が来たことを知らせるために、大きくあいさつをしたんだけど、いつもはすぐに返ってくるお返事が今日は返ってこなかった。


わたしたちが不思議に思って顔を見合わせていると、もうひとつ奥の部屋から大きな声がふたつ聞こえてきた。は、はう?



「何考えてるんだよオヤジ!! 俺は反対だぞ、いくらなんでも無茶だ!!」

「ハー! モー、うるさいデスネー!! 何事もチャッレーンジが大事だといつも言っているデショーガ!!」



奥の部屋から聞こえてくるのは達也さんと、この特徴的なしゃべり方は間違いなく博士だ。それにしてもすごい、ええと、け、けんまくだ。どうしたんだろう…。



「なんや、正宗ちゃん帰ってきとるんか!」

「はう? 明石屋のおじさん、博士とお知り合いなの?」

「おお! 仲良うしてもらっとるで! 日本におりはるときはよう一緒に飲みに行くんや。それにしてもなんや喧嘩か~? これは仲裁しに行かんとな! ちょっとお嬢ちゃんはここで待っときや」



そう言って明石屋のおじさんは一足先に奥へと進んで、大きな声が聞こえてくるお部屋をノックして入ってしまった。おじさんがお部屋に入った後、あんなに大きく響き渡っていた声が静まった代わりに、和気あいあいとした楽しげな声が聞こえてきた。ええええあんな一瞬でお部屋の中の雰囲気変えちゃったの!? あ、明石屋のおじさん、すごい。


ほあー、としばらく感動していると、お部屋のドアが開かれて明石屋のおじさんがひょっこり顔を出し、わたしを手招きした。これは入ってもいいってことだよね…。招かれるままにわたしはお部屋へと向かった。










お部屋に入るとそこに居たのは、さっき聞こえてきた声の主である達也さんと、博士と、わたしと一緒にここに来た明石屋のおじさんと、そして…―――



「はう!? な、なんでお父さんがここに居るの?」



テーブルを挟んで、達也さんと向かい合うお父さんが居た。お父さんはわたしを見てにこにことほほ笑み、手を振ってくれたので思わず振り返してしまった。そ、そうじゃなくて…。



「お、お父さん。今日大学は? 授業は?」

「実は今日はお休みでね。まーやを驚かせたくて黙ってたんだ」

「え? 驚かせ…? …は、はう!!?」



すると突然わたしの体が浮いたので、びっくりして後ろを振り向くと満面の笑みでわたしを抱っこする博士が居た。そしてそのまま博士はわたしを抱っこしたままくるくるとその場を回りだした。は、はううう。よ、酔うううう。



「ハーイ!!! 真綾チャン! ひッさしぶりデスネー!! ちょッと大きくなりマシタカー!?」

「あばばばば。そ、そんなに久しぶりでもな、ないですうおおおお」

「ハハハハハー!! 高速回転デス! ワハハハハ、オ、オエエエエ」



わたしをくるくる回していたおかげで博士も酔ってしまったのかわたしを急いで下ろし、青いお顔で口を押さえていた。そしてそんな博士を明石屋のおじさんが慣れた様子で背中をさすってあげていた。博士も「ば、バケツ…」と言いながら、明石屋のおじさんのシャツを掴んで悶えていた。ほ、本当に知り合いだったんだなー…。



するとテーブルに座っていた達也さんがわたしの名前を呼んでちょいちょいと自分達の居るところに来るようにジェスチャーしていた。わたしは今も酔いで苦しんでいる博士を明石屋のおじさんにとりあえず任せて、お父さんと達也さんの近くに行くと、達也さんは誰も居ない隣の椅子をわざわざ引いてわたしを座らせてくれた。座った正面には相変わらず笑ったままのお父さんが居て、なんだか学校のさんしゃめんだんを思い出してちょっと恥ずかしくなった。達也さんはそんなわたしの肩を優しくつかんで、お父さんに向かって真剣に話を始めた。



「白附さん、いいですか。このように、お嬢さんはまだ小学生ということもあって、特にまーやちゃんは平均より身体も小さい。押し倒されたらそれこそ力では敵いませんし、命にだって関わります。実際に俺はその体格差も目にしてます。いくらなんでも、まーやちゃんにアイツを任せるのは危険すぎます。オヤジの言うことなんて真に受けちゃいけません」

「? 達也さん?」



一体何のお話しをしているんだろう。達也さんはいつになく必死になって、おそらくわたしに関係していることについてお父さんを説得しようとしているのが伝わってきた。そしてお父さんも穏やかな様子ではあるけど、真剣に達也さんのお話を聞いているのが分かった。



「…まーやちゃんも来てくれたことですし、もう一度お話ししますね」



達也さんは一度大きく息を吐いて、「まーやちゃんもよく聞いておいてね」と念を押されたので、達也さんがこれからお話しすることを集中して聞こうとわたしも気を引き締めた。






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