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葵は母の手を握り、震える声で問いかけた。
「ママ…奇跡って…どういうこと?」
母は深く息をつき、静かに口を開く。
「葵、あなたがニュースで見たあの子たち…奇跡の子と呼ばれる子たちよ。普通とは違う特別な力や能力を持って生まれてきたわけじゃない。でも、医学的に極めて珍しい状況で生まれた子なの」
葵は目を見開く。頭の中で言葉がぐるぐる回る。
「…奇跡…?」
胸の奥に違和感と混乱が心を支配する。
「あなたがお腹にいるって言われた時、本当に驚いた。だけど、嬉しかったの。あなたは私にとって大事な子ども。私も奇跡だと思ってる。
世の中の人も色々なことを言うかもしれない。でも、あなたはきっと私の所を選んで来てくれたんだと今は思ってるの。
葵、あなたが一番大切で、愛してるのよ」
葵は言葉を反芻し、混乱したまま母を見つめる。
胸の奥では戸惑いばかりが膨らみ、理解したい気持ちと信じられない気持ちが絡み合う。
母はそっと葵の肩に手を置き、柔らかく微笑む。
「あなたがここにいること、それだけで奇跡なのよ」
葵は幼い頃から感じていた漠然とした違和感が、言葉として形を持ち始めた瞬間だった。




