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奇跡の胎動  作者: めい


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73/86

12-3


翌日、指定された喫茶店に入ると、先に着いていた夫が立ち上がった。

その隣には男女二人──団体のメンバーらしい──が座っている。テーブルの上には水の入ったグラスと、配られたばかりの紙の資料。


「来てくれてありがとう」

夫は笑おうとしたが、唇の端はわずかに引きつっていた。


「こちらは、僕が今関わっている活動の仲間だ」

男のほうが軽く会釈し、女のほうがまっすぐ私を見た。

「単為生殖の子どもと親のことを考える会です。お話を聞かせていただきたくて」


手元の資料には、太い文字で〈未来の家族を守るために〉と書かれている。

ページをめくると、グラフや統計の横に、「倫理的懸念」「遺伝的リスク」などの言葉が並んでいた。


夫が口を開く。

「君のことも、ちゃんと理解してもらえるはずだ。僕も、これが君のためになると思ってる」


私の胸の奥に、冷たい水がしみ込んでいく。

「……私のため?」

声が、自分でも驚くほど小さく震えた。


団体の女性がやさしい口調で言う。

「私たちは敵じゃありません。ただ、これから生まれてくる子が安心して生きられる社会をつくりたいんです」


──でも、その“安心”は、誰の基準で測られるの?

心の中で問いかけても、口には出せなかった。



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