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「未来の光」の活動が全国へ広がり、制度化への期待が高まっていたある日。
新聞の一面に、大きな見出しが踊った。
「奇跡の子」研究に政府関与、情報統制か
記事によると、政府は長年、奇跡の子に関するデータを密かに収集し、研究結果の一部を公表せずに隠してきた。
さらに過去には、発症リスクを持つ家庭に対し、水面下で監視や接触を行っていたという。
美咲は記事を読む手を震わせた。
あれほど「家族のため」と信じていた制度づくりの裏に、こんな事実が隠されていたなんて――。
健太も記事を見つめたまま動かない。
「俺たちは、ずっと見られてたってことか…?」
その声には、怒りと諦めが入り混じっていた。
白石は黙って記事を読み終えた後、ふと小宮の顔を思い出す。
そういえば、以前の会話で小宮が曖昧に口を濁したことがあった。
その瞬間、白石は確信した。――小宮は、この可能性を知っていたのだ。
数日後、小宮は白石の前で静かに頷いた。
「確証はなかった。ただ…妙な資料の消失や、研究費の不自然な中断を何度も見てきた。政府が関与していると疑ってはいたが、動けば潰されると思っていた。」
白石は息を呑む。
医師としても、母としても、この事実は重すぎた。
政府が関与していたことで、一部の治療法やデータが公にされなかった可能性――それは、健太や同じ境遇の子たちの命を奪いかねないことだった。
「私は医師として、何をすべきなのか……」
「母として、子どもたちをどう守ればいいのか……」
答えが見えず、迷いと葛藤に心が引き裂かれる思いだった。
だが、静かに胸の内に浮かぶのは、あの小さな命たちの笑顔。
彼らがただ、普通の幸せを掴む権利を持っていること。
「もう、隠れて生きる時代は終わらせたい」
白石はやがて決意を固め、再び前を向いた。
それは、苦しくとも進むべき道――命を守るための戦いの始まりだった。




