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海辺で美咲の手を握りながら、健太は静かに息を吸い込んだ。
彼女を守ると誓った以上、ただ気持ちを伝えるだけでは足りない。
世間が、自分たちの存在を認め、受け入れてくれなければ——。
翌日、健太は大学の講義を終えると、図書館に向かった。
机に広げたのは、新聞の切り抜きや過去のネット記事、そして自分の出生に関する情報。
事実をどう伝えれば誤解を減らせるのか、どう動けば偏見を和らげられるのか——真剣に考え始めた。
同時に、SNSで同じような境遇を持つ人たちに連絡を取り、体験談を集める。
「話を聞かせてください」というメッセージに、少しずつ返信が届き始める。
夜、美咲に電話をかけると、彼女は驚きつつも笑って言った。
「健太くん……本気だね」
「本気だよ。美咲を守るためだし、俺たちを否定する世間を変えるため」
彼の声は穏やかで、けれど芯のある響きを帯びていた。
その声を聞きながら、美咲は電話の向こうで目を細め、そっと呟いた。
「……そんな健太くんが、やっぱり好き」
健太の胸の奥で、静かに火が燃え上がった。
これはただの恋愛じゃない。
二人が一緒にいる未来を守るための、最初の一歩だった。




