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夜の海風は少し冷たく、街灯のオレンジ色が歩道をぼんやりと照らしていた。
美咲は先に着いていて、手すりにもたれながら海を見ていた。
髪が風に揺れ、光に透けてやわらかな色を帯びる。
「遅くなってごめん」
声をかけると、美咲は振り向き、少しはにかんだ笑顔を見せた。
その笑顔に、健太の胸がじんと熱くなる。
「……ちょっと心配してた。なんか、声、元気なかったから」
「うん。……ちょっと考えごとしてた」
本当は、離れることを考えていたなんて言えるはずもなかった。
代わりに、美咲の横に立ち、同じ海を見た。
波の音が二人の間を静かに満たしている。
ふと、美咲がこちらを見上げる。
その瞳は、不安を隠しながらも、自分を信じようとする強さを宿していた。
「健太くんがそばにいてくれると……なんか安心する」
その一言が、健太の胸に深く届いた。
ただの優しい言葉じゃない。
それは、美咲が自分を信じてくれている証だった。
(……俺がいなきゃ、美咲は安心できない)
距離を置いて守るなんて、きっとできない。
それよりも、自分が前に立って、全部から彼女を守りたい。
健太はそっと美咲の手を握った。
その手は少し冷たかったけれど、握り返す力は確かだった。
「美咲……俺、絶対離れない」
短くても、その言葉には健太のすべての決意が込められていた。
海風が吹き抜けても、二人の手は離れなかった。




