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夕暮れの窓辺で、健太は深呼吸をした。
少し震える手でスマホを握りしめ、母親の名前を画面に呼び出す。
「お母さん、ちょっと話があるんだ」
声は思ったよりも落ち着いていたけれど、心臓はまだドキドキしている。
画面の向こうの母の顔が優しく映る。
「どうしたの、健太?」
母の温かい声に、健太は少し勇気をもらった。
「実は、俺…付き合ってる子ができたんだ」
言葉が素直に口をついて出た瞬間、胸の中の緊張が少し溶けていくのを感じた。
母の目が驚きと嬉しさでぱっと輝いた。
「そうなの!誰かしら?どんな子?」
興味津々の声が画面から伝わってくる。
「美咲っていう子で、すごく優しいんだ。俺、彼女といるとすごく落ち着く」
言葉にしながら、健太は自然と微笑んだ。
「それはよかったね。お母さんも安心したわ」
母の言葉に胸がじんわり熱くなった。
「これからもちゃんと報告するから」
健太は約束するように言った。
「うん、楽しみにしてるよ。健太らしく、ゆっくり進みなさいね」
母の笑顔を見て、健太は自分の選んだ道に少し自信を持てた気がした。




