6-2
夕暮れの空がゆっくりと茜色に染まる帰り道。
健太は意識してゆっくり歩こうとしたけれど、足の裏が少し汗ばんでいるのに気づいた。
隣で話す美咲の声は、いつもより少しだけ震えていて、その緊張がこちらにも伝わってきた。
「こ、こっちの道で…いいかな?」
小さく漏れた言葉に、健太は思わず目を合わせてしまう。
その一瞬、美咲の頬がほんのり赤く染まっていることに気づき、胸の奥がふわりと熱くなった。
「う、うん、そうだね」
声が少し裏返ったことに自分でも驚きながら、慌てて顔を背ける。
心臓が爆発しそうなほど速く鼓動していて、手のひらが汗ばんでいるのもわかった。
二人の歩幅が自然と合わさって、知らず知らずのうちに肩が触れそうになる。
その感覚に、健太は急に冷たい風が顔を撫でるのを感じたふりをして、視線を足元に落とす。
「えっと、また…今度も、一緒に帰ろうか?」
美咲の声はかすかに震え、彼女は視線を落としたまま小さく呟いた。
その控えめな誘いに、健太の胸はぎゅっと締めつけられるようだった。
「うん、いいよ」
やっと絞り出した言葉はどこかぎこちなく、言い終わった後、慌てて笑顔を作ろうとする。
だが口元が引きつってしまい、自分でも苦笑した。
頭の中はぐちゃぐちゃで、何度も「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせる。
でも、心の奥のほんの小さな場所に、ほのかな温かさが芽生え始めていることに気づいた。
“こんな気持ち、知らなかった。これが、好きってことなのかな”
そう思うと、急に恥ずかしくて、もっと知らない自分を見られるのが怖くなる。
でも、美咲と過ごす時間は、そんな不安も少しだけ和らげてくれる。
二人はまだぎこちなくて、不完全だけど、確かに近づいていっている。
未来のことはわからないけれど、この瞬間だけは、健太の胸に優しい希望が灯っていた。




