3-7
白石のマンションは、都心の外れにある築年数の古い二LDKだった。
玄関に入ると、靴箱の上に置かれた観葉植物と、窓から射す午後の光がやわらかく差し込む。瑞稀はその明るさに一瞬だけ安堵の息をついた。
「こっちが寝室。あなたと赤ちゃん、しばらくはここを使って」
白石はためらいなく、普段自分が使っている部屋を差し出した。瑞稀は申し訳なさそうに頭を下げ、赤ん坊を布団に寝かせる。
ふと、リビングのベビーベッドに、もうひとりの赤ん坊が眠っているのに気づく。
小さな手を握りしめ、静かな寝息を立てているその顔は――驚くほど白石に似ていた。
「……この子、あなたの?」
瑞稀が問うと、白石は一瞬だけ迷い、静かに頷いた。
「うん。でも……父親はいない。あなたと同じ」
瑞稀は息を呑む。
「じゃあ、この子も……」
「そう。検査結果は、あなたの娘とほとんど同じだった」
奇跡の子が、ここにもいた。
そして今、自分の娘と、その子が同じ屋根の下で眠っている――その事実に、瑞稀は胸の奥がざわめいた。
キッチンでは小宮がパソコンを開き、何やらデータを打ち込んでいる。
「これからは外出は最低限に。訪問者があれば、俺か白石さんの判断で会うか決める」
彼の声は淡々としていたが、その奥に緊張があった。
幸い、まだマスコミには気づかれていない。
夕食は簡単なスープとパン。
食卓につくと、瑞稀はぽつりと呟いた。
「……温かい」
白石はスプーンを置き、瑞稀の顔を見た。
「私たちは普通……じゃないかもしれない。
でも、守るって決めたから」




