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奇跡の胎動  作者: めい


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3-6


夜半、白石のスマホが震えた。

画面には、見覚えのある名前――瑞稀。

通話ボタンを押すと、受話口から小さく押し殺した声が聞こえた。


「……助けて」


背筋に冷たいものが走る。

「瑞稀さん? 今どこにいるんですか」


しばらく沈黙が続き、ようやく答えが返ってきた。

「港の近くの……倉庫街。誰にも言わないで」


背景には、赤ん坊のかすかな泣き声。

白石は心臓が早鐘を打つのを感じた。


「分かりました。すぐ行きます」

電話を切ると同時に、小宮へ連絡を入れる。


潮風の匂いが濃くなる倉庫街の一角。

白石が指示された場所にたどり着くと、古びたシャッターが少しだけ開き、中から瑞稀の顔がのぞいた。

頬はこけ、目の下には深い隈。腕には毛布に包まれた赤ん坊がいた。


「……やっぱり、あの子のこと、もう隠しきれない」

瑞稀はそう言って、白石の胸元に視線を落とした。

赤ん坊の瞳は、母と同じ琥珀色に光っていた。


小宮は一瞥して口を開く。

「政府が動き始めています。政府の保護施設に入れば、安全は確保できます。ただし、外界との接触は制限される」


瑞稀は即座に首を振った。

「そんなところに入ったら、この子は……ただの“標本”になる」


会話の間にも、赤ん坊の琥珀色の瞳がこちらを見ていた。

小宮は数秒黙り込み、やがて低い声で言った。

「……分かった。俺が守る。白石さん、あなたも協力してください」


白石は迷わずうなずいた。

「もちろん。私の家に来て」


こうして瑞稀と赤ん坊は、白石の部屋で暮らすことになった。


夜の倉庫街を離れるとき、誰も口にはしなかったが、三人とも、この選択が平穏とは程遠い未来を呼び寄せることを、薄々感じていた。


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