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小宮が政府プロジェクトに関わり始めて三か月後。
ある早朝、研究所の廊下がざわめきに包まれた。
同僚がタブレットを持って駆け寄ってくる。
「小宮さん、これ……ニュース見ましたか」
画面には、週刊誌の電子版が大きな見出しを踊らせていた。
“父親不在で誕生した奇跡の子 母娘そっくりの遺伝子”
記事には、匿名としながらも離島で生まれた女児について詳細が書かれていた。
顔立ちや年齢、母の職業のヒントまで盛り込まれ、ぼかされてはいるが事情を知る人間なら誰のことか分かる。
しかも「近く男児も誕生」という一文まであった。
「……漏れたな」
小宮は低く呟いた。
この情報が世間に広まれば、研究は一気に混乱する。
現象への過剰な期待や恐怖が煽られ、政治的圧力も強まるだろう。
実際、ネット上ではすでに “新しい時代の子” “人類進化の第一歩” といった言葉が飛び交い始めていた。
その瞬間、小宮のスマホが震えた。
表示されたのは白石からの着信。
出ると、彼女の声は切羽詰まっていた。
「……瑞稀さんの居場所、もう安全じゃないかもしれない」




