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奇跡の胎動  作者: めい


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11/86

3-1


その日はやってきた。

生まれた瑞稀の子は、女の子だった。


小宮は戸惑っていた。


遺伝子解析装置のディスプレイが、いつまでも同じ数値を示していた。


 99.94%。

 母親と娘のDNA一致率だった。


「……嘘だろ」


小宮博士は椅子から半分立ち上がったまま、目を画面に貼り付けた。可能性があることは頭の片隅にあった。それでも現実を目の前にして、そんな言葉しか出なかった。


通常、母子の遺伝子一致率は半分、つまり50%。

父親由来の半分が必ず混じる。

だが、このデータは違う。まるで母親のコピーだ。


これは奇跡の子どもだ。

 

小宮は眉をひそめ、検査プロトコルを三度やり直した。結果は変わらない。遺伝子配列はほぼ完全に一致しており、差異はミトコンドリアDNAのわずかな変化だけだった。

 

背後でドアが開く音がした。

「小宮くん、結果は?」

振り向くと、所長の吉村が立っていた。白髪混じりのスーツ姿、笑みはない。

 

「……単為生殖の可能性があります」

声が震えていた。

 

所長はしばらく沈黙し、そして低く言った。

「公表するな。今はまだ、誰にも」

 

その瞬間、小宮は気づいてしまった。

これは、ただの遺伝学の珍事ではない。

何か、大きな歯車が静かに回り始めている。


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