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第9話 地下四層の忘れ物棚
照合の矢印は、ときどき正規の棚を通り越す。
その夜の矢印は、立ち入りの少ない地下四層の旧保管区画を指した。廃止済みのはずの棚列には薄い埃が積もっているのに、一角だけ足跡が新しい。
番号のない仮棚。その奥に、未登録の装備が十数点眠っていた。
「これ、全部……」
灯が息をのむ。
救命盾の予備パーツ、補償申請済みの魔力槍、返却待ちの探索端末、そして金烏の刀身。
「失くなったことにされた物の置き場だ」
城崎が低く言う。
私は棚札の裏をめくった。薄く書かれた共通記号がある。渉外課で使う撮影便コードと同じものだ。
「地上へ戻さず、いったんここへ沈める。必要なときだけ動かす」
「横流しの中継棚ってこと?」
灯の言葉に、私は頷いた。
返却されない物には、返さないための場所がある。




