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第8話 後輩受付嬢の笑顔
姫野真白が保管庫へやってきたのは、雨の夜だった。
「澪さん、大変そうですね」
白いブラウスも笑顔も、窓口にいた頃と同じだ。違うのは、今その笑顔が私の席を踏み台にしていると知っていることだけだった。
「何か用?」
「未処理の返却札、少し持ってきました。新しい窓口、忙しくて」
箱の中には、本来なら地上で処理すべき案件まで混じっていた。押しつけるつもりなのが見え見えだ。
「救命盾の件も、早く忘れた方がいいですよ」
姫野は柔らかい声で続ける。
「早乙女課長、澪さんにも戻る道を考えてるみたいですし」
「あなたはどうなの」
私が聞くと、姫野は一瞬だけ目をそらした。
「私だって、いつまでも受付にいたくありませんから」
それが本音だった。悪意だけじゃない。席を欲しがる焦りも混じっている。
でも、だからって人を沈めていい理由にはならない。




