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第18話 私が保管庫を開ける理由
監査面談の席で、姫野真白は最初、何も知らないと言い張った。
けれど照合結果と幽霊伝票の時刻、端末認証の履歴を並べると、肩が小さく震えた。
「課長が、やれって……」
ぽつりと落ちた声は細かった。
「窓口にいたままじゃ、ずっと使い捨てだって。だから私に席をくれるって」
「それで人の席を奪ったの」
「……はい」
私は責めるためにここへ来たんじゃない。ただ、本当の順番を戻しに来た。
「私はね、失くした物を返せなかった人を見て育ったの」
父の工具箱の話をすると、姫野はうつむいたまま泣いた。
「保管庫を開けるのは、そこに押し込められたままのものを終わらせるため」
有賀が静かに記録を止めた。城崎も灯も何も言わない。
それでよかった。




