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第11話 行政補償課が来る夜
有賀紗季は、最初から私を信用していたわけじゃない。
「センター職員も補償請求も、私はどちらも疑って入ります」
書類の山を前に、彼女はそう言った。
「それでいいです。疑って、揃えてください」
私は事故報告、受領印、保管棚移送履歴を順に並べた。照合で見えた流れを、人間が読める形へ落とし込む。
「同じ口座へ、別件の補償金が集まってる」
有賀が画面を止めた。
「スポンサーの下請け会社です」
「白牙の案件だけじゃない」
遺失物、補償、渉外便。三つの部門をまたいで、失くしたことにした装備から金を抜いている。
「大きいですね」
「だから表へ出すときは一撃で出す」
有賀は硬い口調のまま、私へ書類束を渡した。
「三谷さん、あなたは保管庫の帳尻を。私は行政側の帳尻を合わせます」
冷たい人かと思っていたけれど、仕事を渡す声は誠実だった。




