表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時の守人~時に翻弄された王女イリスは諦めない~  作者: 冬木ゆあ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/68

第38話 新たな旅のはじまり

 場所をイリスの部屋に移し、イリス、カルロス、フィオナ、ホセは久しぶりの再会を喜んでいた。離れていた間の話題は尽きない。

 夜も更けてきて、そろそろお開きの雰囲気になってきた頃のことだった。

 フィオナはお茶を一口飲んだ。


「カルロスはいつまでルーベンスにいるの?」


 カルロスは緑の瞳をフィオナに向けた。


「今日到着したばかりだからな。しばらくはルーベンスにいるんじゃないか?」


 イリスはそれに微笑んだ。


「そう。なら、ダニエラとコニーも誘って、みんなでりんごをとりにいきましょうよ。森においしいりんごがなる木があるの」


 フィオナは明るい笑みを浮かべた。


「いいね! ホセもアルド王国に帰る前がいいから、さっそく明日行こうよ」


 ホセはうなずいた。


「明日はオレも自由にしていいとユアン様から言われている。行けるぜ」


 カルロスもうなずいたその時だった。カーテンが閉まっている窓から音がした。イリスたちは窓を見てからお互い顔を見合わせた。

 フィオナは怪訝そうな顔をした。


「今、窓をノックする音がしなかった?」


 それにカルロスは首を横に傾げた。


「こんな夜更けに、厳重な警備がされてるこの城の、しかも、王女の部屋のバルコニーだぞ。きっと風かなにかじゃないのか?」


 すると、またノックする音がして、イリスたちは再び窓に視線を向けた。

 フィオナは机に腕を置き、カルロスを見た。


「気のせいじゃないよ。カルロス、見てきてよ」


 カルロスはそれに嫌な顔をした。


「いやだよ。ホセ、行ってこいよ」


 ホセは青い顔で首を横に振った。


「オレだっていやだよ。こんな時間に尋ねてくるやつなんて、アレしかないじゃん!」


 フィオナは首を横に傾げた。


「あれってなにさ?」

「おばけに決まっているじゃん!」


 ホセが真剣な顔で言うので、フィオナは笑った。


「そんなのいるわけないでしょう。お子様だなぁ」


 またノックの音がして、イリスが覚悟を決めた顔で立ち上がった。


「ここは私の部屋だし、私が……」


 カルロスが呆れた顔で立ち上がった。


「お前が出たら一番だめだろう。しかたがない。俺が見てくる」


 カルロスは剣のグリップに手を添え、閉まっているカーテンをおそるおそる少しだけ開けた。


「何もいない……」


 カルロスはそう言いながら視線を下げて、小さく笑いながら振り返った。


「かわいい緑色の鳥がきているぞ」


 それにイリスたちはほっとしたような顔をした。カルロスは窓を開けると、緑の鳥はトコトコと室内に入ってきた。次の瞬間、それは女性の姿になった。緑の長い髪、ピンクの花のようなドレスが揺れている。

 それにカルロスは驚き、飛び退いた。フィオナの顔色が変わり、転がるようにその女性の前に駆け寄り、跪いた。


「森の妖精とお見受けいたします」


 フィオナの言葉に、イリスとホセは立ち上がった。

 森の妖精は優しく微笑みを浮かべる。


「森の魔女見習いフィオナ、顔をあげなさい」


 フィオナはおそるおそる森の妖精を見上げた。


「このような人間の国にいらっしゃるなんて、あたしたちに何か御用でしょうか?」


 森の妖精はフィオナに一通の手紙を差し出した。


「妖精王の手紙を届けにきました」


 フィオナは黄金の瞳を見開き、震える手で手紙を受け取った。それを開いて、中身に目を通す。フィオナはしゅんとした顔でイリスを振り返った。


「あたし、文字は読めないんだった……」


 イリスは苦笑しながらフィオナの横に膝をつき、手紙を受け取った。それを読んで、薄い茶色の瞳を戸惑ったように揺らした。


「これは私たち四人への妖精王からの招待状……」


 その言葉を聞いたカルロスとホセもイリスのそばに寄った。フィオナも驚いた顔でイリスを見た。イリスは森の妖精に視線を向け、お辞儀をした。


「お初にお目にかかります。ルーベンス王国第一王女のイリス・ルーベンスと申します。この度は、遠路はるばる手紙を届けていただき、感謝いたします」


 森の妖精はイリスに優しい緑の瞳を向けた。


「妖精王は時を取り戻したあなた方に会いたいと仰せです。わたくしが妖精の国までご案内いたします」

「謹んでお受けいたします。支度をいたしますので、少し猶予をいただけますか?」


 イリスはそう言ってから顔を上げた。カルロスは慌てた様子でイリスの肩に手を置き、耳元に顔を寄せた。


「そんな安請け合いしていいのか? 妖精の国がどこにあるのかもわからないのに……」

「妖精王直々の招待状を断れないでしょう。それに私たちを呼んだ理由も気になる」


 イリスの瞳に迷いはなく、カルロスは諦めたように小さくため息をついた。


「わかった。俺も行こう」

「オレも、オレも! 楽しそう!」


 ホセは茶色の瞳を輝かせている。

 フィオナも立ち上がり、うなずいた。


「もちろん、あたしも行くよ」


 イリスは部屋の扉を開け、控えていた侍女に声をかけた。


「お父様とお母様、それからユアンを応接間に呼んでもらえる? 急ぎの用件だと伝えて」

「かしこまりました」


 侍女はうなずき、足早に去っていった。イリスは森の妖精に向き直った。


「父と母に事情を説明させていただきたいのです。ご同行いただけますか?」


 森の妖精はうなずき、イリスたちは部屋を出た。イリスを先頭に廊下を歩き、応接間で国王、王妃、ユアンを待った。

 三人は一緒にやってきた。国王は入室しながら、イリスに尋ねた。


「このような時間に急ぎの用件とはなんだ? ユアン王子まで呼び出して……」


 そう言いながら、視線は森の妖精に向かった。王妃とユアンも見知らぬ人がいることに怪訝そうにしている。

 イリスは森の妖精に手を向けた。


「こちらは森の妖精。私たちに妖精王からの招待状を持ってきてくださいました」


 その言葉に国王は驚き、森の妖精を見た。


「お初にお目にかかります。ルーベンス王国、国王のパトリック・ルーベンスと申します。まさか妖精が実在したとは……。お会いできて光栄です」


 王妃とユアンも国王の後ろで驚いた顔をしている。

 イリスは国王に顔を向けた。


「妖精王からの招待をお受けしようと思うの。私たちは妖精の国に行ってくる」


 国王は躊躇いながら、森の妖精に尋ねた。


「無知で申し訳ございませんが、妖精の国とはどちらにあるのでしょうか?」


 それに答えたのはフィオナだった。


「妖精の国へはリース王国にある妖精の森から行けます」


 国王はうなずき、少し考えを巡らせたあと、イリスに視線を向けた。


「気をつけて行ってきなさい。馬車を用意しよう」


 イリスは笑みを浮かべ、うなずいた。


「ありがとう、お父様」


 ユアンはホセに視線を向けた。


「ホセも行くのか?」

「そのつもりです。許可をいただけますか?」


 ホセは胸に手を当て、お辞儀をした。ユアンはうなずいた。


「イリスを守れよ」

「御意」


 ユアンの従者として振る舞うホセに、カルロスは驚いた。


「お前、見違えたな」

「フレディ様に厳しく躾けられたからな」


 ホセが胸を張っていつもの調子でそう言ったので、思わずみんな笑ってしまった。


 翌日。

 城の前に止められた馬車にイリスたちは乗り込んだ。フィオナの肩には緑の鳥の姿になった森の妖精が乗っている。

 国王、王妃、ユアン、フレディが見送りに来ており、王妃は馬車の扉が閉まる前にイリスの手を握った。


「いってらっしゃい、イリス。みんなも」

「いってきます」


 イリスは笑顔でそう言うと、王妃の手を離した。

 馬車は動き出し、フィオナはご満悦の表情で馬車のソファーに座っている。


「さすがは王室の馬車だね。ソファーがふかふかだ」


 カルロスはそれに微笑んだ。


「今回の旅は、国王公認だからな。気楽な旅だ」


 こうして、イリスたちの新たな旅は、はじまった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ