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「お願いよ、ノア!私は卒業パーティーに行かないといけないの。この日の為にいろいろと準備してきたんだから!」
ネグリジェに身を包んだままふらふらと立ち上がってくる姉の肩を、押さえつけるようにしてベッドに戻す。立っているのもやっとだった姉は、それだけでそのままベッドに倒れ込んだ。
「あきらめろ。そんな熱で行けるわけないだろ」
「でもだって、私が行かないとルーカス様が……」
舌打ちとため息が、ほぼ同時に出る。姉は、この国の第一王子ルーカスの婚約者であった。姉には不思議な力があった。万物を癒し、魔を払う聖なる力。姉はその優れた力で幼い頃から聖女と呼ばれた。
それは王の耳にも入り、あれよあれよという間に、姉は王子の婚約者となったのだ。姉はそのことに使命感をもっている。国母となるからと厳しい花嫁修行もこなしてきた。
今日のことも楽しみにしていたようで、鏡の前で念入りに肌の手入れをしていたことも、この日のために服を新調していたことも聞いている。
そんな姉はの肩は、切らした息で上下し、頬は紅潮していた。緑の瞳は潤んで光を大きく反射していた。そんな美しい姉。心優しい姉。
だからこそ思う。この姉は、あの馬鹿王子には勿体無いと。
だからこそ思う。この姉が焦がれているであろう王子が心底妬ましいと。
「じゃあ、もう俺行くから。大人しく寝てろよ」
ああ、やだやだ。姉と馬鹿王子のことを考えてると暗くなってくる。
モヤを振り払うようにベッドから離れようとすると、服の裾を思いっきりひっぱられ、そのままベッドの脇で尻餅をつく。
「なにするんだよ?!」
振り返ると、両の頬を思いっきり掴まれた。血走った目が眼前にあった。
「まだイけるわよね」
「は?」
「うん。あなた痩せてるし。イけるわ」
「なに?」
パチンっと、姉が指を鳴らすと、背後でドアが閉まる音がした。
振り返ると侍女が数人。ブラシやらコルセットやらを持って立っているのが見えた。
「なぁ、姉貴……何を?」
「昔よくやったじゃない。だから、今日も。ね?」
姉がにっこりと笑い、侍女に合図する。
悲鳴を上げる間も無く、俺は服を剥がされ、髪をとかされ、腰を締め上げられ、あっとい
う間に姉そっくりに仕立て上げられた。




