20話
3カ月近く間が空いてしまい申し訳ありません。
今回は少し長めです。
「えーっと、ここがその魔法界に繋がるゲートのある場所なんですか?」
「おうよ。まあ人目に付きやすいからそうとは思えんのは解るが」
夕暮れ時。夜の帳が下りようとする時間帯に、総悟とマリベルはコンビニ付近に来ていた。そこは丁度、総悟が初めて彼女に出会った場所だ。
「あら、マリベルじゃない」
「ようアリエル」
そこには既にツインテールと短髪の少女がいた。2人とも総悟たちとほぼ同時刻にここに来たらしい。
「こんばんは先輩」
「こんばんは神楽ちゃん」
挨拶を済ませた所で、マリベルは言った。
「それじゃあ行くといますかね。おっとその前に」
マリベルは肩に掛けていた鞄からバンダナを取り出し、総悟に手渡す。一方アリエルも同様に、バンダナを神楽に身に着けるよう促していた。
「何ですかこれ?」
「翻訳バンダナ。コイツを身に着けている間はあたしらの世界の殆の言語が脳内にインプットされるのさ。では改めて」
彼女は右手を頭上に掲げ、早口で何かの呪文を唱えた。すると手を掲げた場所に穴が開き、紫色の光を湛えたゲートが生成される。
「…誰かに見られたりしませんかね」
「認識阻害の魔法を掛けておいたから平気だぜ」
それから穴の中心に4人で、さながら満員電車のように固まって立つ。
「かなり揺れるからしっかり掴まってろよ」
「は、はい」
マリベルは総悟と腕を組み、身体を密着させる。香水と思われる芳香が鼻腔を撫で、総悟はとくんと胸が高鳴った。
「さ、私達も」
「はい師匠」
神楽がアリエルに抱き着いた所で、マリベルは再び手を掲げた。
「では———いざ魔法界へ!」
ゲートから一筋の光が放たれ、4人を包む。それは凄まじいまでの速度で4人をゲートの中にまで吸い寄せた。旋風が発生するが、道を行く人達はそれに解さない。4人の存在を認知している者は今この場に皆無だった。
ゲートは収縮し、一瞬でその形を消失した。先程まで異世界に繋がる入口がこの場に存在していた等誰も気づきはしない。
夕暮れのコンビニに、部活帰りの学生の声が木霊していた。
閃光に全身を包まれたかと思ったら、次の瞬間には石畳の地面に立ち尽くしていた。
それが、総悟の初めての異世界移動の感想だった。強烈な光を浴びたせいで、今でも目の奥が痛い。思わず目元を押さえる。
「お、大丈夫か」
傍らにいたマリベルが手に宿した白い光を、総悟に当てた。魔法だったのか眼の痛みが和らぎ、完全に治癒した。
「どこか他に痛い所は無いかい?」
「あ、大丈夫です」
「無事着いたみたいね」
総悟の後ろからアリエルがひょこりと顔を出す。その傍らには当然ながら神楽もいた。
「ふにゅ~」
気の抜ける声を出す神楽。眼を回しているのを見るに、転移の際に酔ったらしい。
「ほら、しっかりして」
アリエルは神楽に掌を翳す。すると彼女はたちまちの内に正気を取り戻した。
神楽が元気になった所で、総悟は改めて周囲を見渡してみた。
そこは石造りの建物だった。古めかしい洋風の衣装に身を包んだ大勢の人々が建物の中を行き交うその様は、神楽に進められてプレイしたことがあるMMOの集会所のようだった。
「ここは…」
「エインヘリャル。非魔法界とこちらを結ぶゲートが開いているターミナルさ」
確かにマリベルの言う通り人々の活気で溢れているそこは駅のような様を呈していた。時折見かけるこの世界から浮いた格好の者は、総悟と同様の契約者だろうか。
後方を振り向いてみると紫色の光が渦巻いていた。どうやらこれが、魔法少女2人の言うゲートらしい。
「さ、行こうか。あたしらから離れんなよ?はぐれてもらったら面倒なんでな」
それから人混みを掻き分けるように進むこと10分程度。出入口とみられる場所に到着した。
目的地に着くまで総悟は周囲を観察していたが、どうやらこの場所は観光地としての側面も持ち合わせているようだった。
建物の中心部と見られる場所には土産屋と思しき露店が立ち並んでいた。看板に日本語で「ホテル」と記載されているものを見つけたが、他の看板に描かれている文字も全て日本語であったためこれに関しては翻訳バンダナの効力のようだ。
「ホテルもあるんですね、ここ」
総悟が思っていたことをそのまま神楽が口にする。
「おうよ。今日は別の所に泊まるが」
今回の集会は遅くなりそうなので宿を提供する。と令状に記述されていたのを思い出す。
出入口から出て最初に総悟の眼に飛び込んで来たのは、高山もかくやの絶景だった。どうやらこのターミナルは遥か高所にあるらしく、眼下にはいつかビルの屋上で見たそれよりも美しい夜景が広がっていた。100万ドルの夜景、という言葉が総悟と神楽の脳裏を過る。
「す、すごい…」
「綺麗…」
「そこの策から下見てみな。たまげるぜ」
マリベルのその言葉に従って、2人は前方にあった策から眼下を覗き込む。彼らの眼に飛び込んできたものは、おおよそ非魔法界では決してありえないものだった。
「き、」
「「木!?」」
総悟と神楽は驚きの余りに、腰を抜かしそうになった。
そこにあったものは巨大な樹木だった。おおよそ創作物の中でしか見たことのないような巨大な樹木の上に、この建造物は建立されていたのだ。
口をあんぐりと開けて驚く少年少女に、魔法少女2人は言う。
「こちらが国の天然記念物に指定されている樹木、レーラズでございます」
「このターミナルはレーラズの丁度真上に位置しているの。ここの夜景見ながら飲むお酒は最高よ」
「す、すごいです…まさかこんなモノ見ることが出来るなんて…眼福です!」
神楽はまるで幼い子供のように眼を輝かせていた。理想だ、魔法の世界とか私の理想郷だ。
「すごいわぁ。他の造りはどうなってるのかしら…」
「こらこら。そんなに燥がないの」
ハイテンションで舞い上がっている様子の神楽を、アリエルは窘める。
「はっ!すいません、ちょっと興奮し過ぎちゃいました」
「うおっ!やべっ」
腕時計を見ていたマリベルが、急に焦り出す。
「時間押して来てるな。急ぐぜ」
それから外観の前庭の中心部にあった転移の魔法陣に乗り、地上へ下る。それから集会があるという宮殿までの魔法陣へと乗り継ぐ。おおよそ10分程度で、目的地に到着した。
魔法陣から降りて総悟が最初に目にしたのは鬱蒼とした森だった。舗装された道を挟んで立つそれは街灯に照らされ、淡い輝きを放っている。それは見るも神秘的で奥深くまで引き込まれるようだった。
「ここが集会のある場所なんですか?」
「おうよ。この先にあるぜ、あたしら魔法少女の本拠地——ヴァルハラがな」
ヴァルハラ――ワルキューレと呼ばれる国際組織が運営する魔法少女の育成機関であり、無魔討伐の精鋭部隊の本拠地でもある謂わばこの世界の魔法少女達の総本山であると、総悟は以前マリベルから聞いたことがあった。
「もう少しで集会が始まるわ。急ぐよ」
速足で道なりに進み、薔薇のような植物の蔓で出来たトンネルを潜り抜けると、それが見えて来た。
それは金色に輝く宮殿だった。正門には、精巧な狼と鷹の彫像が立てられ、正面に見える前庭には様々な色の艶やかな果実が実る木が立ち並んでいる。
門の前には白いローブを羽織った少女が右手に剣を、左手に天秤をそれぞれ携えて直立不動の姿勢で立っていた。厳かな佇まいは、見る者に威圧感を与える。
「ソーゴとカグラはここで待ってな。あたしとアリエルは受付に行ってくるぜ」
門の前に立つ少女の前に行き、マリベルとアリエルは言う。
「3186番部隊隊長マリベル・スタッカート、ただいま到着しました」
「3185番部隊隊長アリエル・デカント、並びに到着しました」
ローブを羽織った少女に跪き、頭を垂れる。少女は2人を見下ろしてから天秤を見つめる。天秤には右の皿に白い羽が、左の皿には黒い羽が載せられていた。天秤をマリベルに近づけると、天秤は右に傾いた。次にアリエルに近づけると同じくして右に傾く。
「あそこにいる者達はお前達の契約者で相違ないな?」
「相違ありません」
「間違いありません」
少女は今一度2人に天秤を近づけた。いずれにしても、天秤は右に傾く。
「ふむ。どうやらお前達の言うことに嘘・偽りは無いと見える。よかろう、あそこにいる者共も含めて通っても宜しい」
少女は厳かに言うと、閉ざされていた門の扉を開けた。
「あと少しで集会が始まるぞ。急いだ方がいい」
「解ってますよユースさん」
ユースと呼ばれた少女は不愛想に促すと、門の正面から右側に移動した。
「ほら、行くぜ2人とも。あの人の言う通り急がないとヤバい」
「…お二人とも隊長だったんですね…」
「あたしもアリエルも去年就任したばかりだけどな」
マリベルに言われるまま駆け足気味で宮殿まで進み、扉を開けて内部に入る。豪奢な装飾に彩られたロビーが彼らを迎えたが、よく観察する暇は無い。
「こっちだ」
入口のすぐ傍にある大きな扉の中に入る。扉の中には大勢の人が、椅子に腰掛け、雑談に興じていた。人々の大半はラフなものだったが、ごく一部はターミナルで見かけたこの世界の恰好と思しき古めかしい衣装だった。そして人々の大部分が、女性であった。男性もいることは確かなのだがその数は極端に少なかった。総悟が見た限りでは数人程しか確認出来ない。
「あたしらの席は…あそこか」
殆が人で埋まった席の中で、中央の最前列の席が空いている。傍らの椅子には人が座っているあたり、どうやら敢えて空席にしているらしい。
席の近くまで行って、隣に座っている少女に聴いてみる。
「隣空いてるかい?」
「大丈夫ですよ」
席に着いてから10分程度待っていると、どこからか金管楽器が奏でるような音色が流れ始めた。集会開始の合図のようだ。
総悟はその音色を耳にした途端、ふと気分が沈静化する感覚に陥った。柔らかな音が頭に染み渡り、気分の高揚を抑制する。先程までぺちゃくちゃと雑談を交わしていた周囲の人間が音色を聴いた途端黙りこくったのを見るに、何かしらの魔法が作用しているらしい。
音楽が鳴り止んだ所で前方にある扉から複数人の少女と初老の男性が入室してきた。その一団は正面のステージ上にあがり、そこに配置されていた椅子に腰掛ける。
「皆さん、全員揃われたようですね」
1人の少女が、ステージの最前列で言う。小さな体から発されているとは思えない程の張りのある声の持ち主だった。
「既に私のことをご存じの方も多いと思われますが、改めて自己紹介をしたいと思います。ワルキューレの総隊長を務めさせて頂いております、ブリュンヒルド・ノルドルンです」
深く礼をした後、ブリュンヒルドと名乗った彼女は言った。
「この度皆さまに集まって頂いたのは他でもありません。最近、無魔の活動が活発化しています。そのことに対する注意喚起と今後の無魔討伐の方針をお話しすべく、今回このような時間を設けさせて頂きました」
丁寧な口調で、彼女は続ける。
「まず初めに無魔の活動の活性化についてですが…率直に言います。当方でも調査した所、虚将が本格的に活動し始めた可能性が非常に濃厚であることが発覚しました」
その発言に、ホールにいた魔法少女の大部分がざわついた。先程までの静寂はどこへやら。戦士達が皆焦燥に駆られていることが伝わってきた。
「静粛に!」
それは鶴の一声だった。ブリュンヒルドが発したその言葉は、100人以上の魔法少女を黙らせるには充分だった。
咳払いを1つすると、彼女は続けて話し始めた。
「今回のような事態は過去にも幾度かありましたが、その度我々は事態の収束に成功しています。ですので皆さま、どうかご安心下さい。我々が力を合わせれば、きっとこの事態を収束することが可能な筈です。今から今回の件についての詳細を記した冊子を配布します」
スタッフと思しき少女に冊子の束を渡されたので、後部の座席に渡す。
「時間も押しているので閲覧は各自でお願いします。それでは宴の時間となりましたので、皆さま最上階の大広間までお越し下さい。これで集会を終了致します」
ブリュンヒルデは一礼すると、ステージの傍らに引き揚げた。入れ替わりに初老の男性がステージに立つ。
「最後になりますが、非魔法界に遠征されている方々にお知らせです。日本の奈須山市を拠点とされている方は、翌朝の9時に3階の会議室に集合して下さい。私からのお知らせは以上となります。では、今宵の宴をどうかお楽しみ下さい」
再び広間に騒めきが訪れる。出入口に向かう途中で、総悟はマリベルに宴とやらが何なのか聴いてみることにした。
「マリベルさん。宴って何です?」
「そういや説明してなかったな。ここじゃ週1で魔法少女集めて宴会やってるんだ。良い機会だし、お前も楽しめ」
「皆さま、こちらにお乗り下さい」
広間を出るとセーラー服のような衣服に身を包んだ少女達が人員の誘導を行っていた。彼女らに従って巨大な籠の形をしたリフトの中に入る。
「では出発致します」
丁度総悟達が乗り込んだ所でそれは動き出した。上の階まで一直線に上昇し、天井が最も近く見える階で止まった。どうやらここが最上階のようだ。
(楽しめって言われても顔見知りとか1人もいないんですけど…)
総悟は気が重かった。彼自身人見知りでは無いのだが、赤の他人ばかりの宴を心から楽しめる程コミュニケーション能力がある訳ではなかった。神楽も同じ心情なのか、憂鬱さを湛えた表情である。
「まあ何だ。お前さんたちを孤立させはしないから安心してくれ」
2人の心情を汲み取ったのか、マリベルが言う。それが何を示すのかきょとんとしていると、籠は目的地に到着した。
リフトから降りて先ず眼に入ったのは全長10メートルはあろうかという程の巨大な扉だった。それは軋みながら開き、内側からは光が漏れだす。
扉の中は、確かに宴会場そのものだった。100以上にも及ぶ丸机には無数の料理や酒のような飲料が配膳されており、どこからか陽気な音楽が流れていた。
ぞろぞろと部屋の中に入り、適当な机に着く。
宴会場が人で満たされた所で、宴会場の前方にあったステージに先程集会の進行を務めていたブリュンヒルドが登壇する。彼女は咳払いを1つすると、菱形のコースターのような道具を口元に近づけた。
「では改めて、今夜はお集り頂き真にありがとうございます。先程述べました通り、大変な事態になりましたが、今はそのことを忘れて楽しみましょう。今宵で暫く宴は開催出来なくなってしまうかもしれませんからね。では、これより宴を開始します」
「ひゃっはー!宴の始まりだぁ!」
ブリュンヒルドの言葉を皮切りに、宴会場の中心から叫声が上がった。それを皮切りに先程まで静まり返っていた会場内は途端にざわつき出す。
「うぇーい!マリベルお久―」
「よっ!アリエルも元気してたー?」
宴が始まってから間もなくして、マリベルの元に似通った顔の少女が2人やって来た。どうやら、一卵性の双子らしい。
「おう。久しぶりだなレム」
「こちらこそ久しぶり、サナ」
「ねー二人ともー、この子たち誰?」
レムと呼ばれた方が、総悟と神楽を指差して怪訝そうに言う。
「ああ紹介するよ男の方があたしの契約者、でこっちが」
「私の契約者よ」
一礼して、自己紹介する。
「マリベルさんの契約者の如月総悟です。どうか宜しくお願いします」
「アリエルさんの契約者の天川神楽です。どうぞ宜しく」
「ソウゴ君にカグラちゃんかー。あ、私はレム。レム・シャンよ」
「で、私がサナ。サナ・シャンよ。宜しくね」
レムが2人の名前を反芻しているのを後目に、サナと呼ばれた少女はマリベルに腕を絡ませ、彼女を小突いていた。
「随分可愛い子と契約したじゃないのよマリベル。ね、率直に聞くけど…もう彼とヤっちゃった感じ?」
急に振られた下品な話題に、マリベルは軽快に笑って返した。
「おいおい。随分と下世話な話するじゃんかよ。ストレートなのはバーボンだけで十分だぜ」
「で、実際はどうなの?」
マリベルは頬を指先で掻き、「仕方ねーな」と笑った。
「昨日魔力が底を尽きかけちまってな…そん時に初めてやった」
サナは「ほうほう」と相槌を打ちつつ、更に問い質す。
「アレの具合はどうだった?」
「まずまずだった」
悪びれる気もなく答える。幸いにも当の本人はレムやアリエルと話に華を咲かせているので、こちらの下品な会話は耳には入っていない様子だった。
「ふんふん。あっちの方は背丈に似合わずビッグだと」
「将来は有望だな」
「あ、そうそうマリベル。話は変わるんだけど」
サナは語気を切り替え、幾分か真面目な顔つきになる。
「さっき集会で奈須山拠点してる人に召集かかってたけどさ…アレ、あんまり良い話じゃないみたいよ」
「そうなのか?」
「うん。さっきお偉いさんが話してたのを偶然聞いたんだけど…何か裏切り者がどうとか言ってた」
不穏なワードに、マリベルは思わず顔を顰めた。
「おいおい。まさかあたしらの中に裏切り者がいるってのかよ」
「確証は無いけどね。まあお偉いさんの顔色見るに十中八九良い話じゃないと思うわ」
「ねえねえ君、今夜私の所来ない?2人きりで楽しもうよ!」
「えっ…あの…」
「あーはいはい。ソウゴ君困ってるからちょっと落ち着きましょうねー」
ふと振り返るとレムが総悟に絡み、アリエルがそれを軽くいなしていた。
「あはははっ!ひーおかしー!」
一方で神楽はその様子を見て腹を抱えて笑っていた。顔が赤く上気しているのを見るに、酒に酔っているらしい。
「…あーちょっとアイツらの所行って来るわ」
「あ、じゃあ私も」
神楽に歩み寄り、肩を貸す。
「おいおい。お前酒飲んじまったのかよ」
「えへへー。このジュースしゅごいのぉ。飲むと頭くらくらするっていうかー」
神楽はテーブルのボトルを指差し、けらけらと笑う。手に取って見ると、そこのラベルには「超ハードな刺激をあなたに!どんな酒豪でも一杯で酔い潰れる!」等と記載されていた。
グラスに入っている酒はそれ程少なくないので、どうやら一口飲んだだけのようだ。
「…ちょっとこいつ介抱してくるわ」
「ああそれなら私がやるわ。契約者の私が面倒見るのが筋ってもんでしょ?」
泥酔して足取りの覚束ない少女を肩に背負い、アリエルはホールから退出した。
「ねーねーソウゴくーん、お姉さんと遊ぼうよー。私の部屋で沢山イイことしよ?」
「今ならもう一人追加のサービスしちゃうよ~?」
総悟の肩に豊満な胸を押し当て、耳元で甘く囁く。魔法少女の色香にたじろぐ少年から、マリベルはレムを押しのけた。
「悪いがあたしの連れに手を出すのはご遠慮願おうか。何せコイツはまだウブなんでな」
「え~良いじゃん」
「マリベルのケチー!」
口を尖らせ、渋々総悟から離れる。
「すまん。あたしのダチが迷惑掛けちまったな。ああ見えて悪い奴らじゃないんだ。許してやってくれ」
申し訳無さそうに頭を掻くマリベルに、総悟はフォローを入れる。
「解ってますよ。マリベルさんのお友達なんですから悪い人じゃ無いに決まってますって」
無邪気に笑う少年を見ながら、少女2人は気まずそうに目線を反らした。
「あ、そうだ。なあ2人とも」
何か思い出したように、マリベルがレムとサナに問い掛ける。
「なーに?」
「何かしら」
「先生は今日来て無いのか?集会の時も見かけなかったが」
「ああ。あの人なら急用が入ったとかで今回は不参加よ」
「そうか…ソーゴを紹介しようと思ったんだが、また今度にするか」
話に取り残されかけていた総悟が、訝し気にマリベルに問う。
「…先生って誰のことです?」
「ん、ああ。あたしらの上司だよ。ワルキューレ―――あたしらが所属する無魔討伐組織の幹部なんだが、魔法学校の講師でもあるんだ。魔法界じゃトップクラスの天才だぜ」
「へえ。そんな人がいるんですか。会ってみたいです」
笑いながら相槌を打つ総悟に、レムが横から料理が盛られた皿を差し出した。
「ねーねーソウゴ君。これ食べる?非魔法界の人の口にも合う料理だよ」
「抜け駆けしないでよお姉ちゃん。ソウゴ君、私のも食べて~」
「あ、頂きます…」
少女2人に迫られて総悟は思わずたじろぐ。本当免疫無いのなコイツ。
「モテるねぇお前さん」
マリベルはにやにやと笑いながらその様子を見ていた。
(最初は不安だったけど…皆良い人そうだな)
差し出されたチキンのような風味の肉料理を味わいながら、総悟は内心で安堵した。
今後の投稿に関してですが、連投ではなく小分けにして投稿していこうと思います。




