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少年と魔法少女と三つの世界  作者: ドラゴン☆リンクス
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21話

ブクマ付けて頂きありがとうございます。

 宴会の終了後。マリベルは中庭で煙草を蒸かしていた。木々に実った果実は、イルミネーションのように輝いている。

 周囲を見渡すと、彼女の他にも寛いでいる少女が複数人いた。その内の1人が、マリベルに歩み寄って来る。

「隣、いいかしら?」

 アリエルは壁に寄りかかると、煙草を咥えた。ポケットをまさぐるが、何の感触もない。

「…ごめん、火種貸してくれる?」

「おうよ」

 差し出されたライターの火に、口に咥えた煙草を近付ける。

「サンキュ。やっぱり魔法で着火するよりライターで付けた方が断然良いわ」

「お前普段何吸ってる?」

「ピアニッシモかしら。マリベルは?」

「あたしはショートピースだな」

「へえイカスじゃん。私も別のにしようかしら」

 少しの沈黙の後、アリエルは言う。

「ねえマリベル。貴女、ソウゴ君とは上手くやってるの?」

「おうよ。色々と相性が良くてな。お前の方はどう?」

「私もよ。中々良いオタ友が出来たわ」

「あーこっちじゃそういう趣味持ってる奴中々居なかったもんな」

「ええ。貴女がいなかったら私どうなってたやら…感謝してもし切れないわ」

「へへっ。よせよ」

 照れて赤く染まった顔を隠す。はにかむマリベルを一瞥した後、アリエルは館内に通じる出入口へと歩き出した。

「私はそろそろ休むわ。貴女も早く休んだ方が良いんじゃない?明日招集掛かってるんでしょ」

「…そうだな」

 煙草を灰皿にぐりぐりと押し付け、マリベルは中庭を後にした。




 翌朝。マリベルとアリエルは3階の会議室へ向かった。様々な風景を描いた絵画が掛けられた廊下を進み、廊下の突き当りにある扉を潜る。すると、部屋には既に10人程の少女がいた。どうやら、自分が最後に着いたらしい。

 空いていた席にマリベルとアリエルが隣合って腰掛けると、教壇に立つ壮年が口を開いた。

「全員揃ったようなので、時間は早いですが話を始めたいと思います」

 壮年の背後に控えていた少女達が、冊子を配布する。前席から回されたそれの表紙を見ると、極秘と記されていた。

「最初に言っておきますが、こちらの書類の内容と今回の話の内容は今この部屋にいる方々以外には他言しないで頂きたい。全体の士気に関わりますので」

 前置きを述べた後、本題に入る。

「今回の無魔の大量発生に関してですが…調査の結果、どうやら奈須山市を中心に今回の異変が発生していることが解りました」

 壮年は咳払いを1つし、続ける。

「先日、奈須山市のB-J地区で1台の観光バスが消息を絶ちました。付近を捜索した所、無魔と思しき魔力反応が検出されたのです。しかし、それだけではありません」

 壮年が教壇から降りると、背後の壁に地図が浮かび上がった。地図には所々赤い円が点在している。

「観光バスが消息を絶ったと推測される時間帯に、この地区で無魔が大量に出現しました。それも、このエリアに住むあなた方が、総出で対処しなければならない程に。これは明らかに不自然です」

 地図を拡大させ、説明を続ける。

「以前から奈須山市では、無魔が関与したと思しき事件が他の地域と比較して多く勃発していましたが、今回の異変で改めて調査を行った所、高濃度の魔力残滓が検出されました」

(今まで気付かなかったのかよ…)

 マリベルは内心で、上層部の怠慢に毒づいていた。もっと早く調査しとけよ。

 その後、さらに詳しい情報の究明を呼び掛けた後、集会はそこで終了の運びとなった。席を立つ少女たちに続いてマリベルもその場を後にしようとした所で、背後から呼び止められた。

「ミススタッカート」

「はい」

 振り返ると、昨日の集会でステージ上で話していた壮年の男がいた。

「何ですか?シリティーさん」

 オドー・シリティー。ヴァルハラのオーナーにあたる人物である。

「ミスウートガルザが君のことを呼んでいたよ。何か用事があるらしい」

「そうですか。おいアリエル。ソーゴたちに遅れるって言っておいてくれ」

「解ったわ」

 シリティーに連れられ、マリベルは会場を出た。そして会場の隣の、「執務室」と記されたプレートが下げられた部屋に入る。

 リボンやフリルで装飾されたファンシーな扉を開けると、白いゴスロリに身を包み、赤い蛇の髪飾りで長髪を束ねた少女が出迎えた。

「やっほーマリちゃん。遊んでる?」

 サクソー・ウートガルザ。マリベルの上司に当たる人物であり、現在は検査官長を務めている。

「ええ。この間何かは大勢の無魔と遊びましたよ」

「そかそか。契約者君とはどうなの?最近結んだばかりみたいだけど」

「楽しくやってます。中々可愛い奴ですよ、アイツは」

「そっか。それは良かったわ」

 ニコニコと陽気に笑うウートガルザ。このフランクな性格が、彼女があらゆる人物から好かれる要因なのか、とマリベルは常々考えていた。

「それで、あたしに何の用ですか?」

 問い掛けると、ウートガルザは真面目な顔つきになり、優しい声音で言った。

「ああそうそう。マリちゃん。貴女、非魔法界(向こう)で非常時でもないのに魔法を使ったそうね」

「うっ」

 ぎくりとし、冷や汗を流す。

「非魔法界でプライベートな事情での魔法の使用は原則として禁止。解ってるよね?」

「す、すいません…」

 マリベルはウートガルザに頭を下げた。彼女の機嫌を損ねることは、組織内においての立場的な死を意味していた。

「貴女には頑張ってもらってる訳だけど…規則は規則よ」

 ウートガルザはデスクから数枚の書類を取り出し、マリベルに手渡した。

「私からのプレゼント。3、4時間もあれば書き終わると思うわ」

「…ありがとうございます。こんなに懲罰を軽くして頂けるなんて」

 本来であれば分厚い紙束となる筈だった始末書を受け取り、マリベルは深々と頭を下げた。殊勝な態度を取る彼女を、マリベルは笑いながら窘める。

「良いの良いの。マリちゃんにはもっと頑張って欲しいんだもん。こんなことで時間を割かせる訳にはいかないわ」

 それからウートガルザは椅子に腰掛け、壁に密接して置かれたパイプオルガンの蓋を開けた。

「ここで書いてく?BGMも付けるわよ」

「あ、はい。ありがとうございます。その前に連れに連絡してきますね」

 マリベルはウートガルザに一礼し、執務室を後にした。

 マリベルが去ってから、ウートガルザはオルガンに向かい直った。そして指を下唇に置いて、少しの間考えてから呟いた。

「さて、今日はこの曲にしようかしら」

 1、2回程度鍵盤を指で押して音色を確かめる。音色が正しいことを確認すると、小さくか細い手で演奏を始めた。

 朝の宮殿を、パイプオルガンの荘厳な音色が彩っていた。





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