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婚約者を奪った聖女と、修道院行きの馬車で相席になりました ~同じ王子に二人とも捨てられたので、悪評と名声を半分こして途中下車します~

作者:kanane
最新エピソード掲載日:2026/10/09
「段取りが良すぎて可愛げがない」と言われ続けた公爵令嬢クラリッサは、「聖女をいじめた悪女」として婚約を破棄され、修道院行きの馬車に乗せられた。

ところが、先客がいた。婚約者を奪ったことになっている聖女、ロッティだ。

「あ、どうも。私も捨てられました。同じ殿下に、同じ日に。ちなみに、奪ってません」

同じ日に、二人とも。つまり、怪しいのは殿下の言い分のほうだ。ならば、おとなしく修道院へ向かう義理もない。

「まず旅程表を作りましょう。泣くのは、宿が決まってからです」

「クラリッサ様、聖女って宿代をまけてもらえるんですよ」

休憩で馬車が止まった隙に、居眠り中の護送官をそっと残して、二人は馬車を降りた。

悪女の名前で盗賊を黙らせ、聖女の笑顔で宿代を値切る。旅程表の備考欄は、各地の名物でびっしり埋まっている。悪評も名声も、半分こ。どうせ、誰かが勝手に貼ったレッテルだ。

なお王宮では、殿下の予定表を三年間ひとりで組んでいたのが誰だったのか、まだ誰も気づいていない。

けれど、殿下はなぜ二人を同時に捨てたのか。その答えを知っていそうな堅物の護送官コンラートだけが、今日も無言で、旅程表の三歩後ろをついてくる。
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