攻防
————ズオオオオオッ!!————
祠の空間が裂けるほどの圧力。五輪塔が悲鳴を上げるように軋む。
ガルバは必死に印を結ぶ。
『オン・バザラ・アラタンノウ・オンタラク・ソワカ!!
———金剛結界!!』
————ガガガガガッ!!
金色の結界が張られ、シュリーの光を必死に押し返す。
しかし———
[無駄だよ、虚空蔵君。その程度じゃ、ボクは止められない。]
————バキィィィィンッ!!
シュリーの光が結界を徐々に破っていく。
そして、ガルバの胸元へ迫る。
『・・・・・っ!!』
(・・・だめだ・・・ガルバさんが・・・死ぬ・・・!!オレ・・・何もできない・・・!!)
その時だった。
————ふと、婆ちゃんの声が蘇る。
(常に自分の心に打ち勝て。恐れるな。結果はどうとでも成る。)
(・・・心に・・・・打ち勝つ・・・・今、逃げたら・・絶対後悔する・・・!!)
[じゃあね、虚空蔵君。]
『・・・・っ!!』
(・・・動け・・・動け・・!!オレの体・・・・動けぇぇぇぇ!!)
オレは瓦礫から飛び出した。
「うおおおおおおおおおっっ!!」
右手に、あの“発遣”の感覚が走る。
「オンバザラボキシャボク!!」
————ズガァァァァンッ!!
明斗の放った渾身の発遣が、一直線にシュリーの横っ腹へ突き刺さった。
[・・・・・・・ぐっ!?]
完全に不意を突かれた形となったシュリ—は、そのまま吹き飛ばされ壁に叩き付けられた。
それと同時に、青白い光が霧散する。
ガルバさんが目を見開いた。
『・・・・・明斗殿!?・・・やはり・・!!』
シュリーは瓦礫の中から腹を押さえ、ゆっくりと明斗を見た。
[・・・へぇ・・・・やるじゃん・・・お兄さ・・・・]
シュリ—がそう言いかけた時、
————ズガァァァァンッ!!————
明斗の二発目の発遣が、シュリ—の右腕を直撃した。
[・・・・がはっ!!!!]
[・・・てめぇ、間髪入れずに2発目入れるとは・・・しかも利き腕に・・・。てめぇ、ハナからこれ狙ってやがったな・・・これじゃ、印も組めねぇじゃね~か。クソがっ!!]
シュリ—は、右腕を支えながら立ち上がる。
そして、その金色の瞳が、初めて“興味”と“殺意”を帯びた。
[虚空蔵、命拾いしたな。あの兄ちゃんに助けられてちゃ守護者が廃れるなぁ。
・・・お前達、今は引いてやる。必ず纏めてブッ倒してやるからな。]
そう言い残し、シュリ—は天上に空いた穴へジャンプし、姿を消した。
シュリーが天井の穴へ跳び去り、祠の空気が一瞬だけ静まり返った。
————カラン……ッ
瓦礫が転がる音だけが響く。
『・・・明斗殿・・・!』
ガルバが駆け寄ろうとしたその瞬間だった。
「・・・っ・・・・は・・っ・・・・」
明斗の膝がガクンと折れた。
(・・やば・・・体・・力が・・・抜け・・・・)
視界がぐらりと揺れる。
————ドサッ。
明斗はその場に崩れ落ちた。
『明斗殿!!』
ガルバが慌てて抱きとめる。
(・・・あ・・ガルバ・・・さん・・やべ・・・力・・入ら・・・)
指一本動かない。呼吸も浅い。全身が鉛みたいに重い。
ガルバは明斗の脈を取り、顔色を見て、眉を深く寄せた。
『・・・二発も・・あの“技”を・・・』
ガルバさんの声が震えている。
『明斗殿・・これは・・・普通の人間が扱ってよい力では・・・』
(・・・わかってる・・・でも・・・・助けたかった——。
ガルバさん・・死にそうだったから・・・)
口が動かない。声も出ない。
ただ、意識だけが薄れていく。
ガルバは明斗を抱きかかえ、祠の中央から離れた場所へそっと寝かせた。
『・・・明斗殿。よく・・・耐えました。よく・・・私を・・助けてくれました・・』
その声は、いつもの落ち着いたガルバではなく、どこか震えていた。
(・・婆ちゃん・・・オレ・・・ちゃんと・・心に・・・勝てた・・かな・・・)
————ストン。
明斗の意識は完全に途切れた。




