導き
—————明斗、婆ちゃんが尼になったのは、ある日お大師様の声が聞こえたからなんじゃ。
婆ちゃんに、近い将来に厄災が起こるから修行しろってな。でも何も起きんかった。
お大師様は、それからお声を聴かせてはくれなんだ。でも、そのお大師様の声を信じて、ずっと今までやって来た。その婆ちゃんの姿を見て、お前が僧籍を取ると言ってくれた。
あの時は嬉しかったなぁ・・・。なぁ、明斗。
(・・・・・え!?・・・婆ちゃん??・・婆ちゃんなのか?婆ちゃん、そこにいるのか!?)
「・・・・・う・・・。」
———目を覚ますと、ベッドに横になっていた。辺りは、暗く夜になっていた。
窓の外からは、虫の鳴き声がする。遠くからは、ホー、ホーとフクロウの鳴き声も聞こえる。
(・・・・こっちの世界にも虫や鳥もいるんだな・・・あんまりオレ達の世界と変わらないな・・・・)
(・・・それにしても、婆ちゃんの視点での夢、不思議だったな。婆ちゃん、あんな事思ってたのかな。)
————ふと。感傷に浸る。でも、先ほどの戦いが頭をよぎる。
「・・・そう言えば、オレ発遣2発撃って気絶したんだよな。でも、この街に来る前も2発撃ってると。つまり、間隔を開ければまた撃てるという事か。呪力は自然回復すると見て間違いない。」
(・・・そして、今のオレの呪力は発遣2発分。2発撃つと倒れると。オレ、弱っ・・)
明日、ガルバさんに聞かなきゃいけない事が山のようにある。
とりあえず、今日は休もうと横になろうとした時だった。
————ズキッッッッ————!!!
「・・・くっ・・・また・・・」
(・・・汝、武器を取れ・・・)
「武器??そんなの持ってないし、こっちの通貨もアチャラがくれた少しの通貨しか持ってないし、どうやって持つんですか!」
(・・・・汝、こちらの世界に持って来たであろう。我が伝えし法具を。)
「・・・法具!?・・・なんですかそれ?・・・そんなの・・・」
そこまで言いかけて、思い出す。
————あ。そう言えば、オレ、護摩壇と一緒に飛ばされて来たな。護摩壇には法具一式が・・・まさか、あれか!!
「お大師様、護摩壇の法具の事でしょうか??」
(・・・・・・・)
「いや、またヒントも無く交信終了なんかーい!!いっつも一方的なんだよな・・・もう少し会話のラリーを・・・」
(・・・いや。しかし、あの護摩壇、アチャラと出会った最初の場所じゃん・・・
また戻るのかよ・・・ここまで来た意味よ。
はぁぁ・・・もっと早く言って欲しいっすよ。お大師さん・・・・)
(・・・汝、法具を持って綻びと対峙せん。)
「・・・・・うわっ!!!!!まだ交信繋がってたんかいっ!!!さっきの質問はスルーだったんすね!!分かりました。戻って取ってきます。」
———ずっと繋がったままだと、とても嫌なので渋々了承する。
かくして、オレは元の場所に戻る事になった。
どうして、コソコソ出て行かなきゃいけないんだろう・・・
建物を忍び足で移動する。そ~っと、そ~っと。扉を閉めて・・・
「・・・ようやく、出られた・・・」
さっきの戦いで、照明が落ちたらしく、建物の外にはあちこちに篝火が焚かれている。
(・・・こりゃ都合が良いや。一本貰って行こう・・)
篝火の中から、松明替わりに燃えている木を1本引き抜く。
オレは、最初の小高い丘に向けて歩き出した。
(・・・・ガルバさんに声かけて来なかったけど大丈夫だよな?ま、法具取りに行くだけだし・・・)
————しばらく、歩いていると小高い丘が見えてきた。
「おぉ!あれだ!以外と早かったな。これだとガルバさんに見つかる前に戻れそうだ。」
自然と足早になる。
(・・・・そう言えば、アチャラと下っている時に、ここら辺で・・・・)
そんな事を考えていると・・・・
—————ギ・・・ギイィぃぃぃぃア————
「・・・・・もう、この展開うんざりなんだけど・・・」
茂みから、それは出てきた。




