鍛錬
————翌日。
ガルバさんから動いて良しとの許可が出たので、朝から体力回復の為のランニングに精を出していた。すると・・・
『・・・おっと!ここにいたか!』
現れたのは、バサラ。
『ガルバから、明斗の稽古を付けて良いと聞いたから探しておったわい!』
そう言うと、バサラは木剣を投げてよこす。
それを受け取ると軽く振ってみる。木剣の重さに慣れないとな・・・
『・・・よぉ~し。んじゃ、おっ始めるか!』
(・・・・ん?)
バサラはそう言うと、いきなり突進してきた。
「・・・ちょ・・・ちょっとま・・・!!」
慌てて横払いを受ける。
「稽古じゃ無かったのかよ!いきなり実践って!?」
バサラはニヤリと笑い
『何、腑抜けた事を言っておるか!実戦に勝る稽古は無いじゃろうて!』
と言いながら、次々に剣を繰り出してくる。
「・・・くっ・・やっぱり強い・・・防戦一方じゃないか・・・」
しばらく、バサラの猛攻を防いではいたものの、1撃が重いバサラの剣に手が限界を迎える。
————カアアンッッ———
オレの木剣が巻き上げられて宙を舞う。
そして、喉元にピタっと剣先を向けられる。
『・・・・これで終いじゃな。』
「・・・くっ・・やはり、強いなバサラ。」
『お主、誰に物を言っておる。降三世明王の守護者ぞ。我は。』
『明斗に足らないのは、実戦経験と目であるな。足運びなどは良い物を持っておる。』
「・・・目か・・・。確かに、ブランクが長かったから目が慣れていないのもあるかも。」
『・・・お主、実戦を意識した素振りとワシとの実戦で十分じゃな。体力づくりはしておるようだしの。』
(・・・これだけの強者になると、相手の力量や弱点を補うための方法なんかは、剣を交えれば分かるんだな・・・・)
「・・・あぁ。まさしく、その通りかも。毎日続けてみる。バサラも宜しく。」
『・・・うむ。出来る限り付き合ってやろう。』
「それで、バサラにもう一つお願いがあるんだけど。オレともう一戦やってくれないか?」
『・・・先程負けたばかりなのにか?』
「・・・あぁ。ちょっと、試したい事があって。」
『・・・ほぅ。相分かった。』
「・・ありがとう。助かる。」
バサラは、ジリジリと後ろに下がっていく。
オレは、先程バサラに巻き上げられて落ちている木剣を拾うと、宙に投げる。
『・・・・何じゃい!?』
バサラが投げた木剣に目を向けている間に、オレは素早く護身法を結ぶ。
落ちてきた木剣をキャッチし、構える。
『・・・お!?・・お主何をした?』
バサラの表情が急に楽しそうになる。
「・・・行くぞ!」
そう言うと、オレは一気に間合いを詰める。
護身法は、身体強化になる。しかし、呪力を常に纏っている為、消費が激しい。つまり、時間制限付きバフみたいなものだ。
———短期決戦。
バサラは、急に身体能力が上がったオレのスピードに面食らっている様子。
オレは、突っ込んでからの突きを放つ。
尋常じゃない反応速度で、それを避けるバサラ。避けた反動を使って、そのまま横回し蹴りをしかけてくる。
オレは低くしゃがんで、その蹴りをかわし、軸足を払いに行く。
バサラは、地面に木剣を突き刺すようにしてそれを受け止める。
———カアンッッ!!———
(・・・クソっ・・人間離れした動きしやがって・・・)
バサラは、そのまま左足を踵落としのようにオレに振り下ろしてくる。
オレはその踵落としを横に転がり逃げる。そのまま起き上がり、再び剣を構える。
『・・・急に動きが良くなったのぉ。ならば、こちらからも行かんとのぉ・・』
バサラは、そう言うとふうっと息を吐く。
———来る。
さっきのオレと同じ、突き攻撃。しかも左片手平突き。
(・・・おいおい・・・まるで、某マンガの〇突じゃん!!)
そんな事を考える余裕も無く、下からの擦り上げでしのぐ。そのままの勢いで木剣を持っている小手を狙う。
・・・とそこに、バサラの左下から斜め上めがけて蹴りが飛んでくる。
(・・・コイツ、重心移動が速い・・・)
そう。平突きをかわされたのが分かった瞬間に、左足前重心だったのを後ろ重心に変えて蹴りを放つ辺り、相当な手練れである。
でも、今なら身体強化されてるから受けれるハズ・・・
オレは、左足と左手でガードしバサラの蹴りを受ける。
すると、この至近距離で、バサラは再度突きを出そうとする。
オレはそれを防ぐ為、敢えて頭からバサラの腹部めがけて突っ込む。
思いがけない動きだったのか、
『・・・うおっ・・!!』
と声に出るバサラ。
とと・・っと後ろに下がるバサラ。
オレは、木剣を構えるバサラにオレは待ったポーズをする。
「・・・・そろそろ無理っぽいから、ここまでで。」
そう。最初は少しだけ試しで護身法を使おうかと思っていたのだが、バサラが強すぎて全力で呪力を纏っていたので、呪力切れ寸前になっていたのだ。
『・・・何じゃい!ここから面白かったと言うに・・・』
つまらなさそうな顔をするバサラ。
「・・・まぁ、試しだから。ところで、どうだった?」
『・・・う~む。実戦ではその長さではちと使い物にはならぬかも知れぬな・・ただ、瞬間力では、ワシと同等位までにはなるかものぉ。何れにせよ、呪力アップが鍵になろうて。』
「・・・・そっかぁ・・・やっぱり、そこに辿り着くよなぁ・・・」
『・・・まぁ、死線を潜り抜ければ自ずと呪力はついてくるものよ。戦いの中で呪力も上がると言うからな。』
————かくして、ガルバの呪力アップ修行とバサラの剣術修行が幕を上げたのであった。




