剣導
—カチン!
——カチン!!
———カチン!!!
リズム良く拍子木が鳴り、オレ達行者が揃って行を行っている。
汗だくになりながら、辛い行に耐える日々。
((・・・そっか・・あの後に、大阿闍梨さんから初めて伝授があって、行法やったっけ・・・))
((最初は次第に付箋貼ってやってたっけ・・・懐かしいな・・・))
「・・・・う・・・う・・。」
意識が少しずつ戻る。
そうか・・・オレは、急に襲ってきたバサラと戦って・・・
咄嗟に思い付いた突きで・・・・
・・・・って、負けたっ!?
オレは、慌てて起き上がる。
——と思って上半身を起こそうとするも、世界がぐわんぐわんしている。
『明斗殿、気が付かれましたか!まだ動いてはダメです。所謂、脳震盪です。』
「・・・なるほど・・・だから、世界がまだぐわんぐわんしてるんですね・・・。いつつ・・・顎痛い・・・」
『すみません。私がバサラを連れて来てしまったので、明斗殿にご迷惑を・・・』
オレは、徐々に、ぐわんぐわんが収まってきているのを感じながら、腕を額に乗せて話す。
「・・・いえ。実戦経験がまるで足らないのが、よく分かりました。ある意味目が覚めたと言うか・・・」
「・・・まぁ、ガルバさんには、せっかく連れてきて貰ったのに、帰らせてしまって申し訳ないと言うか・・・」
(・・・・さて、これからどうやって剣術を磨くか本格的に悩まなきゃいけな・・・)
——————バンッ!!!—————
「・・・・・!!!!」
凄い音と共に、入口の扉が倒れる。
『おぅ!明斗。目が覚めたか!!丁度良かった。さぁ、稽古だ!!!』
「は!?」
『ちょっと、バサラ落ち着いて下さい。明斗殿は今まだ目覚めたばかりで、脳震盪を起こしているので、しばらくは稽古出来るわけありません。』
『・・・ん?のーとーしん?こうきーしん?そんなのは知らん!ガルバ、そんな気合では何も始まらんわい。動けるようになったんなら、稽古だ。稽古。』
『脳震盪です。これだから脳筋は・・・気合で何とかなるなんて、昭和じゃないのですから。ダメな物はダメです。稽古は明後日からにして下さい。』
(・・・あのぅ・・・本人置いてきぼりで話進めるの止めて欲しいのですが・・・)
「・・・あの・・一つ良いですか?・・」
『・・・おぉ、やはりお主も稽古したいのであろう!よう言った!どうだ、ガルバよ。明斗もこう言って居るではないか!さ、稽古じゃ。稽古。』
『・・・・ですから、さっきから言ってますが、脳震盪の後に動くのは絶対にダメです。しばらくは安静にさせます。明斗殿も、稽古したいのは分かりますが、ダメですよ。』
(・・・この二人・・・どうツッコミを入れれば良いか非常に悩む・・・)
バサラは、生き生きとした表情で、ガルバさんは怪訝な表情でオレを見つめる。
「・・・ちょっと待った。二人とも、状況説明も無しにそんな羨望の眼差しで見られても困る。」
『・・・・は?・・・』
ガルバとバサラ、2人の声がハモる。
「は?はこっちのセリフなんだが??・・で、一体この寸劇は何だ?何でこうなってる?オレ、さっき負けたよね!?これ、ドッキリか何か!?」
『・・・ガルバ、お前まだ話してないのか?』
『いや。話す前にいきなり扉蹴破って入ってきたのはアナタでしょ!大体、扉蹴破って入って来るヤツがどこにいるんですか!常識と言うのはですね・・・』
「・・・はい。ストップ。ガルバさん、あなた虚空蔵菩薩の守護者でしょうが!もう少し落ち着いて。はい。深呼吸。吸って吸って~吐いて~。吸って吸って~吐いて~。次、声に出して~。ヒッヒッフ~。」
真面目に、ひっひっふ~とやっているガルバさん。
「そうそう。もうすぐ生まれますよ~。って、ちが~う!!
思わずノリツッコミを入れるオレ。
ガルバさんは、バサラとの戦いで、バサラに1撃入れたという事で、正式にバサラから剣術を教わる事が出来ると話した。
『まぁ、そんな訳だ。よし。では稽古だ。しっかり鍛えてやる。』
バサラはようやく自分の番だと言わんばかりに立ち上がる。
「・・・バサラ。その前に、何か言う事無いか?」
『・・・何じゃ?あぁ・・・あれか。まぁ・・・その・・何だ・・いくらお主を焚き付けようとしたとは言え、ちと言い過ぎた。すまぬ。』
「・・・あぁ。いくら母親はいないとは言え、ちょっと頭にきた。」
『・・・お主、母親・・・』
「・・・オレが、小学生のころ亡くなった。ずっと海外に行ってたから、顔はうっすらとしか覚えていない。」
『・・・そうか。知らなかったとは言え、それは申し訳ない。』
「いや。いいんだ。それはバサラには関係のない事だし。だからオレは婆さんに育てられたんだ。」
『そうか。その婆さんが尼だった・・・という事か。』
「・・・あぁ。家で毎日拝んでたな。オレが僧籍取ったのも、母親の供養がしたかった。というのが根底にあるし。」
『なるほどな。ならば、尚更今から稽古だなっ!!!』
「・・・いや。何故そこが繋がるんだっ!」
———この後、ガルバさんによってバサラは強制的に退室させられていった。
『明斗殿、しばらく休まれて下さい。何かあったら声掛けを。』
ガルバさんも、そう言うと部屋から出て行った。
何だったんだ、あの二人は・・・コント師か何かか・・・
そう思うオレだった。




