邂逅
((—————・・・か?))
((君・・・・・————丈夫か?))
(・・・・う・・・・)
少しずつ意識が戻り始める。
『君、大丈夫か!?』
———それは、人の声だった。
(・・・はっ!!)
驚いて目を開ける。
そこには、赤い髪、浅黒い肌、耳には大きな輪っかのイヤリングをつけた、ハンサムなお兄さんがオレの顔を覗き込んでいた。
「・・・・いや。・・・・これ、オレがヒロインだったら、確実に恋に落ちるヤツじゃん。」
第一声で出た、心の中の叫び。
『・・・はい!?・・・いきなり何、意味不明な事言ってる訳?頭打った?大丈夫??』
起き上がろうとすると、頭がまだ揺れていてうまく起き上がれない。
『お兄さん、無理しない方が良いよ。きっと、力の使い過ぎだよ。所謂、呪力切れってやつ。』
(・・・・呪力?)
『お兄さん、祈祷師か何か?さっき、凄い力の波動を2回感じたから来てみたら、お兄さんが倒れてるんだもん。ビックリしちゃったよ。』
(・・・・あ。なるほど。あの気味が悪いヤツを倒した時に使った指弾とさっきの試し撃ちの事か。なるほど。どうやらこの世界は呪力というものがあって、さっきの指弾2発撃つと尽きるのか。いや。でも、これ2発って少なくない!?・・・ってか、呪力って復活すんの?・・・え?RPGとかのマジックポイント的な感じ?・・・いや。木に当たっても何もなって無い所を見ると、あの化け物みたいなヤツにしか効果は無いのか!?)
『——————・・・・って、聞いてる?』
(・・・はっ!いかん。全く聞いてなかった。)
「・・・す・・・すみません。助けて頂いて、お礼も言わず・・・」
(・・・・って、普通に日本語通じてるじゃん。ここ、日本なのか?いや。待て。いくら最近の若者とは言え、こんな日本人離れした風体の若者がいるのか!?・・・いや。偏見は良くない。今は多様性の時代だ。どんな人がいたって不思議じゃない。そもそも、助けて頂いたと言ったものの、別に助けてもらった訳じゃなくて、この人はただ見てただけなのでは・・・??)
『——————・・・・って、聞いてないよね??』
(・・・・はっ!いかん。また自分の世界に入ってしまって全く聞いてなかった。)
「・・・すいません。・・・まだ頭がぼーっとしてて・・・」
(———我ながら、咄嗟に出たナイスな言い訳っっ!!)
『嘘っ!!実は何も言って無いし~』
(・・・・!!嘘・・・っ!!・・何だとっ!!コイツ、オレより上手かっ!!)
頭のぼーっと感が無くなってきて、鮮明に相手の顔が映る。
『オレは、アチャラ。各地を旅してる。君は?』
アチャラはそう言って、手を差し出す。
「あぁ、オレは、明斗。名前以外の記憶が無いみたいで・・・」
素性は明かさない方が良いと思って、敢えて隠した。
アチャラの手を取り、立ち上がる。
アチャラは明斗の肩を支えながら、倒れていた場所をチラッと振り返った。
『しかし……あの呪力の波動、普通じゃなかったな。あんな“祓いの衝撃”を素手で出せる人、見たことない。』
(祓いの衝撃……?やっぱり、さっきの“発遣”がこの世界では別物扱いなのか……)
アチャラはオレの手を取り、軽く握って確かめるように言った。
『君、呪力の流れがめちゃくちゃだよ。まるで……“外側から流し込まれた”みたいな感じ。』
(外側……?いや、オレはただの会社員で……
坊さんも、何年もやってないし…‥そんな大層な力、持ってる訳……)
アチャラは明斗の顔を覗き込み、少しだけ真剣な声になる。
『記憶が無いって言ったよね。……なら、なおさら気をつけた方がいい。
この辺りは、最近“理のほつれ”が多いんだ。』
「理の……ほつれ?」
『うん。世界の繋ぎ目が壊されて、魔が湧きやすくなってるんだ。
ここいらには、その“ほつれ”から出た魔が出るって話だから。』
(……理のほつれ。修復……って、そういう事か?)
アチャラは明斗の腕を引き、立ち上がらせる。
『とりあえず、近くの街まで行こう。君みたいに呪力の扱いが不安定な人を、森に放置する訳にはいかないし。』
「……あ、ありがとう。」
アチャラはニッと笑った。
『いいって。困ってる人を放っておけない性分なんだ。それに……君、なんか放っといたら死にそうだし。』
「……否定できない。」
(……てか、この人……絶対いい人だろ……いや、見た目は完全に異世界のイケメンだけど……中身はめっちゃ世話焼きじゃん……)
アチャラは歩き出しながら、ふと振り返った。
『それにさ。君が出したって言うさっきのヤツ、……もう一回見てみたいしね。』
「……いや、あれは偶然だって!」
『偶然であんなの出せるかっての。君、絶対ただ者じゃないよ。』
(……ただ者じゃない、か。オレ自身が一番分かってないんだけどな……)
オレはふらつきながらも、アチャラの後を追った。
———こうして、
この世界で初めて自分以外の人と出会った。
この出会いが、
後に世界を揺るがす大きな因果へと繋がる事を、
この時の明斗はまだ知らない。




