試刃
朝、基礎体力作りだと言われて、永遠に走らされて戻ってきたタイミングで、ガルバさんに呼ばれた。
『・・・明斗殿、お待たせしました。け・・・』
「はぁはぁ・・・ちょ・・・ちょっと待って・・・下さい・・・」
虚空蔵菩薩の守護者・ガルバ・・・頭の中、完全に昭和だ・・・部活中に水飲むな!とか言う、意味が分からない考えの人だ。
そう言ってる時に、視界に入ったのは横なぎで走って来る一筋の太刀。
———なっっ!!!
後方へのけ反り、何とかかわす。
・・・と思ったが、避け切れなかったようで、額から鮮血が散る。
(・・・・ぐっ!やばい。今のは抜き身からの払い。次は上から2太刀目が来る!!)
直感でそう感じたオレは、相手の懐に飛び込む。間合いを詰めれば、上段からの太刀は威力が半減されるハズ。
「ノウマク サンマンダ バザラダン カン」
間合いを詰めると同時に、三鈷杵の剣発動。
(・・・よし。このまま逆袈裟で・・・)
———そう思った時だった。
———バキッっっ!!!!———
それは、前蹴りだった。
もろに、前蹴りを喰らい、吹き飛ぶ。
「・・・がはっ・・・!!」
『・・・ちょっと!!ストップ。待って下さい。まだ、紹介もしてないのに、いきなり始めないで下さい。』
そう言って、ガルバさんが間に入る。
オレは、何とか立ち上がる。額から流れた自分の血で右目が見えていない。
『明斗殿、いきなりすいません。こちらが、明斗殿が探しておられた剣技を教えてくれる、降三世明王の守護者・バサラです。』
『バサラ、こちら不動明王の守護者で修復師の明斗殿です。』
『・・・ふん。珍しくガルバが頭を下げて頼んで来た上に、不動明王の守護者だから、どんなに強いのかと思って来てみたら、とんだヒヨッコでは無いか。』
『こんなヒヨッコに剣技を教えろだ?御免被る。もっとマシになってから出直すべきじゃな。ヒヨッコなんだから、ヒヨッコの、か弱いおっ母に抱っこされてりゃ良いのではないのか??んじゃ、オレは帰らせてもらうとしよう。』
———瞬間。オレの怒りが爆発した。
ダンっっ!!
踏み込むと、バサラの喉目がけて突きを繰り出す。
バサラは、その突きを避けると、オレが見えていない右から足蹴りを繰り出す。
———が、オレはこの攻撃を読んでいた。絶対オレの死角から攻撃が来ると。
オレはその蹴りをしゃがんで避けると、そのまま横なぎでバサラの足を狙う。
———ギンッッ!!———
バサラの足を狙った横なぎをバサラは剣で払い上げる。返す刀でそのまま袈裟斬りを出す。その袈裟斬りをオレは、独鈷杵の盾で払いのける。
『・・・ほう。やるではないか。』
そう言って、バサラは間を取る。
『明斗とか言ったか。ここじゃ存分に動けぬであろう?外に出ようではないか。』
(・・・かなり久々に剣で(あの時は竹刀だったけど)戦った割には、意外と動けるな)
そんな事を思いながら、バサラの提案を受ける。
「・・・分かった。」
『・・・お前が、ワシに一太刀でも入れる事が出来たら、剣術を教えてやろうではないか。』
「・・・ふん。お前みたいな粗暴なヤツに教えを請おうとは思わないが、オレの母を侮辱した事は謝罪してもらう。」
とんだ展開になってしまった事に、右往左往するガルバさん。
中庭まで移動する間に額の止血をしてもらい、両目が見えるようになった。
『・・・じゃあ、遠慮なく行くとしよう。』
そう言うと、ニヤリと笑うバサラ。
———フッ——
バサラが視界から消える。
「・・・・!?・・!?・・・」
次の瞬間、太陽に照らされた切っ先が光るのが一瞬見えた。
———真向!!
三鈷杵剣と独鈷杵の盾でそれを受ける。
そう思った瞬間。真向をフェイントに、バサラ渾身の横蹴りが来る。
「・・・・なっ!?」
バキッっ!!!
「・・・ぐはっ・・・!!!」
横に吹き飛び、倒れる。
『・・・ほう。咄嗟に横に飛んで威力を削ったか。でも、まあ効いたであろうな。』
そう言うと、バサラが一足飛びで間合いを詰める。
オレはよろけながらも、バサラに向かって盾を出して突進する。
『・・・だとして、どうするつもりだ!!』
バサラは、鞘に剣を収め、そのまま抜刀する。所謂一閃だ。
威力十分な一閃を盾と剣で受け止めるが、衝撃が大きすぎて後方へ吹き飛ぶ。
「・・・クソ。このままじゃ何も出来ない。一方的に弄られるだけだ。」
『・・・どうした?これだけか?やっぱり、ヒヨッコではないか。ヒヨッコが過ぎた口を利くではない。』
『・・・ガルバ。悪ぃな。コイツはここで終わるかも知れぬ。まぁ、その時はその時だな。仕方無き事。』
『・・・いや。バサラ、それは困ります。修復師ですよ!バサラ!!聞いてるのですか!!』
ガルバさんが叫んでいるが、バサラには届いていないようだ。
(・・・コイツは、オレを殺そうとしている。どうすれば勝てるか・・・考えろ・・・アイツより早く一太刀入れるしかない・・・どうすれば・・・よし。賭けるか。)
「・・・次は、こっちから行ってやるよ。」
そう言うと、独鈷杵盾を閉じ、剣を両手で握り、低い位置で切っ先をバサラに向けて構える。
『・・・はっ!さっきと同じでは無いか!良かろう。来るが良い。受けて立ってやる。』
「・・・・じゃあ、遠慮なく。」
オレはそう言うと、息を整える。




