守護
帰り道で、様々な事が頭を巡る。
・・・・どうやら、この三鈷杵は、発遣より使う呪力は低いらしい。さっきの戦いで、発遣を1発撃って外した後に、三鈷杵の剣と独鈷杵の結界が発動しても、意識を失わなかった・・・
・・・つまり、発遣の方が呪力を多く使う?飛び道具だから?それとも、今までの戦闘でオレの呪力が上がった?
・・・・RPGで言う所のレベルが上がった的な??テッテレ~♪みたいな?
・・・・もしくは、使えば使うほど呪力の最大容量が上がる?
何れにしても、帰ってガルバさんに聞けば分かるか・・・
トボトボと歩いていると、街の明かりが見えてきた。
・・・ん?
やたら、篝火の数が増えてるな・・・
「———まさかっ!敵襲!?」
慌てて走って街の入り口を目指す。
門まで近付いた時に、ガルバさんの姿が見えた。何やら門兵に指示を出している。
・・・やっぱり、敵襲があったんだ・・みんな、怪我は無いかな・・・
そう思いながら、門まで辿り着く。
・・・はぁはぁ・・・息を切らしているオレをガルバさんが見つけた。
ガルバさんに状況説明を聞こうと声を掛ける。
「・・・・はぁはぁ・・・ガルバさん、だいじょ・・・・・」
その時、ガルバさんの額に怒りマークが並ぶのが見えた気がした。
『———!!明斗殿!!勝手に抜け出すなんて、一体どういう神経しているのですかっっ!!』
「・・・・え!?・・・オレ!?」
『・・・あなたという人は・・・あれだけの事があって、あなたも標的にされているのに、一人でフラフラと抜け出すような真似をして!!』
「・・・・・あ。・・・・はい。・・すみません・・・」
『・・・まったく。少しは自覚して下さい。・・・どうして危険を冒して抜け出したのかは、私の部屋で聞きます。こちらへ。』
そう言って、踵を返すガルバさん。
(・・・この物々しい雰囲気はオレの捜索をしてたのね・・申し訳ない・・・)
途中ですれ違う兵士の皆さんに申し訳ない思いで、ペコペコと頭を下げながらガルバさんの後を追う。
『・・・こちらです。』
そう言って、ガルバさんは扉の前で手をかざす。手に虚空蔵菩薩の梵字が浮かび上がる。
———ガチャ———
扉の鍵が開く音がした。
(・・・・おぉ・・・凄いセキュリティー。これなら賊が来ても入れないわな・・・)
そんな事を思いながら、ガルバさんの後に続いて部屋に入る。
部屋に入って扉を閉めると、スッと周りの音が消えた。
『・・・そちらへお掛け下さい。』
「・・・はい。ありがとうございます。」
そう言って、椅子に腰かける。
ガルバさんは向かいの椅子に腰を下ろした。
(・・・・やべぇ・・・超怒られるヤツだ・・・)
どう言い訳しようかと考えていると、ガルバさんが口を開いた。
『・・・実はこの部屋、守護者のみが入れる聖域なのです。』
(・・・・・・はい???)
「・・・・・え??・・・それはどういう・・・??」
『・・・つまり、明斗殿あなたは『守護者』と言う事になる。』
(守護者って、ガルバさんやガルバさんと戦ってた、シュリ—ってヤツと同じ!?)
「・・・・いやいやいやいや。そんな、オレが守護者だなんて・・・」
『あなたが、この部屋に入る事が出来るのが何よりの証拠。そして、祠であなたを“視た”時にも感じました。』
『明斗殿。あなたは我々が待ち望んでいた『不動明王』の守護者です。』
————はあぁぁぁああぁぁあ!?!?
「・・・ちょ・・ちょっと待って下さい。オレ、こっちの世界の人間じゃないですよ?それに、真言も忘れちゃってる位のダメなヤツですよ!?そんなヤツが・・・」
『・・・いえ。あなたは私に空海の声の話をされましたね?』
「・・・あ。はい。」
『空海は、この世の結び目を作った張本人。そして、その空海が選んだ修復者。それが明斗殿、あなたなのです。』
『この世界の理を補修できるのは選ばれた守護者のみ。つまり、あなたは守護者なのです。そして、結び目を破壊しこの世を一度壊して再構築し、乱れを正そうとしているシュリ—のような敵陣営は、まだこのことを知らない。何故なら、知っていれば、修復が出来る守護者を真っ先に抹殺するでしょうから。』
(・・・確かに。)
更に、ガルバさんは続ける。
『故に、明斗殿に呪力があり、我々が使う事が出来ない技も使える。』
「・・・・技ですか?」
『・・・はい。シュリ—に直撃させた、あの技等は典型です。あれは、我々守護者は使いたくても使えない。何故なら、守護仏の力ではなく明斗殿が自ら修行し体得した技だからです。』
「・・・加行・・・ですか・・・」
『・・・その修行は加行と呼ばれているのですか?』
「・・はい。僧籍を取る為には絶対に受けなきゃいけないものです。」
『・・・。なるほど。その加行はどんな修行なのですか??』
「え~っと・・・あんまり詳しく覚えてないですが、仏様と一体になって・・・仏様と縁を結ぶというか・・・本尊様の修法をするための基礎訓練?みたいな事をやるって言ってたような気がします・・・。」
『・・・・何だか、随分説明がしどろもどろですが、本当に受けました?』
「・・・受けたのは覚えてます!内容は忘れてますが。」
『・・明斗殿、そこは胸を張らなくても良い所です。』
「・・・あはは・・・ですよねぇ・・」
『・・・・それで、先ほどは抜け出してどこへ行っていたのですか?まさか、敵に連れ去られたとか・・・』
「いえいえ。それではないです。勝手に抜け出してすいませんでした。実は、寝てたら声が聞こえてきて・・・」
オレは、出来事を全て話した。
『・・・何と。法具ですか。それはお持ちで?』
「はい。ここに。」
そう言って、全ての法具を並べる。
『・・・これは!!』
そう言うとガルバさんは金剛鈴を手に取る。
『・・・間違いない。これは祠、つまり結び目を修復する法具!』
(・・・え??マジで!?)
(・・・そんなラッキーショットある!?オレが持ち帰らなかったら、もう一回取りに行かなきゃいけない物じゃんっ!!マジで、お大師様、肝心な所はきちんと伝えて欲しい・・・)
「・・・・良かった・・・お役に立ちそうな物があって。」
『・・・明斗殿。何を言っています?まるで私が使うような話し方ですが・・・先程も言ったではないですか。修復するのはあなたです。と。』
「・・・・やっぱりか・・・ワンチャン、ガルバさんやってくれないかな~なんて・・・」
(・・・・ガルバさんがジト目でオレを見る・・・)
「・・・ははは・・・じょ・・・冗談ですよ~。何言ってるんですかぁ~・・・」
そう言って、オレは観念した。




