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第8章:1年生、音葉(おとは)(3)

 例の「気持ち悪い」と言いだしたクラスメートが、一度ホームルームの時間に話題にしてしまった。

 先生は「そういう、個人を詮索する話題はやめてください」と注意した。

 でも私は、そこで立ちあがって訴えた「それって私のことですよね。こそこそ言われるのはいやなので、一度、きちんと話をさせて下さい。せっかくなので、みんなの気持ちを知りたい」。漠然とみんなの反応を聞いてみた。

 気にしてないよと言ってくれるのが、普段仲良くしてる 2人ぐらい。

 やっぱり気になるなと言っているのが、例のクラスメートと、彼女と仲の良い2人ぐらい。

 残りの子は、どっちでもいい、そんな感じだった。何人か、指名して話を振ってみた。「トランスの子を受け入れる学校って、入学前から知っていた。おっさんがそうなんだって気付いた。それだけだよ」「具体的に困った行動とか状況があるならば口を出すと思うけど、おっさんが迷惑なことをしたのは見てないよ」気を遣っているというより、普段特に仲良しでもないし、関心がない、そんな感じだった。


 一週間くらい考えた。

 ホームルームでもう一度時間をもらった。

「あたし、この学校は、3学期が終わったら、やめることにします。

 こないだの話の結果じゃないです。気持ち悪いといった人が原因でもないです。

 私 ちっちゃい頃からおしゃれとかに気を使ってる人だから、今の身体では、この制服って似合わないかなと思って、決断したんです」


 雑な説明だった。もっと丁寧に説明するならば、卒業時期かなと思った。学校と言うより、小さい頃からの「かわいい女の子としての人生」からの卒業。


 小さい頃から、心のよりどころにしてた「だれよりもかわいい女の子になるんだ」って気持ち。現実を踏まえて、少し考え直した方がよいのかも。まだ漠然としていて、具体的な次がみえているわけではないんだけど。でもこの学校が居場所じゃなさそうだって気持ちが強くなった。


「残り短いけどして、仲良くしてくださいね」

 残念とか、よかったとか、そんな声もなかった。みんな「ふーん」という反応。

 お友達は「今後のおっさんが幸せだったらいいね」と言ってくれた。


 残りわずかの日に、クラスの有志が送別会として、カラオケ大会を開いてくれた。

 例の「気持ち悪い」の主も参加していた。

「別に嫌ってたわけじゃないし、せっかくだから、デュエット歌おうよ。おっさんって、男声できるでしょ」

「何かやりたい歌があるの?」

「別れても好きな人」

 それってデュエットだったっけ?


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