第5章:受験生、彩夏(2)
イベントもたけなわになり、チーム対抗のボールゲームが行われた。危ないことがおこらないように、監視していたのだけど。
「いまのいかさまじゃん」
男の子同士が言い争いになった。ついに手が出てしまった。
「そろそろやめてね」
あたしと、もう一人の試験官お姉さんとで、止めに入るけど、子ども達はやめない。つかみ合った二人、このままだと遊具にぶつかって大怪我しそう。思わず大きな声が出た。
「やめなさい!怪我しちゃう!」
思わず自分が発した声、思いっきり男子の、ドスのきいた声だったので、自分でも驚いた。
そして、子ども達も驚いた。
「え、今の声、お姉さん?」
「すごい、霊長類最強の人みたい」
二人とも、ケンカを忘れ、笑い出した。
はずかしさに、あたしは両手で顔を塞ぎ、その場にしゃがみ込んだ。
ケンカが止まったのでよかったけど、思いがけず身体からでてしまった男の声に、落ち込んでしまった。あたしの中に「男」が、まだまだ残っていたなんて。こんな形で表に出てしまうなんて。
夢中に過ごす内に、イベントはおわった。子ども達ともお別れ。
「ばいばい、今日は楽しかった」
「霊長類最強のお姉さん、またね」
笑顔で応えたが、あたしの気持ちもちょっと参った。
帰りのバス。落ち込んだ顔をしていると、同行したお姉さんが慰めてくれた。
「かっこよかったよ。夢中で子供を守ろうとしたんでしょ。彩夏ちゃんの行動は正しいよ」




