第4章:卒業生、絵理、そして同級生(2)
入学から月日が過ぎた。親しいお友達って言えるひと、できなかった。最初はみんな誘ってくれたけど、あたしの反応が悪かったのかな。気付いたら、いつも一人だった。女子って、グループを作ることが多いみたいだけど、どのグループにも入らなかった。部活も入らなかった。全く口をきかないわけではない。でも、誰かと親しくすることはなかった。
一方、美弥ちゃんはクラスメートに囲まれて、いつもお友達いっぱい。一度だけ、授業のグループで、美弥ちゃんと同じ班になった。たまたま他の子が席を外して美弥ちゃんと二人になった。「...あのね、美弥ちゃん...」「なあに?」ニコリと反応してくれた。でもことばが続かなかった。すぐに他の子が戻ってきた。美弥ちゃんはそのまま戻った子と会話を続けた。
美弥ちゃん、読者から「臍の位置が」「ひょっとして」とか指摘されても、堂々と「そうだよ、あたしトランス女子だから」と答えているらしい。あんなに堂々とアウティングできるなんて、うらやましい。
ひきかえ、あたしは、自分からアウティングする勇気がない。かといって、特別な目で見られるのもいや。そう思ったら、学校の中でもついついおとなしくなってしまう。
でも、同級生に美弥ちゃんがいるのが、心の支え。ホントにそれだけが心の支え。それがあったから、なんとか3年間、この学校で過ごせた...と思う。
***
卒業式が終わった。美弥ちゃんって、卒業式でも目立ってたなあ。
校庭で記念撮影をしあっているとき、たまたま美弥ちゃんが近くにいた。
思い切って話しかけた。「美弥ちゃん、卒業前に、少しお話ししたい」「え、なに?もしかして告白?」「ううん、そうじゃなくて...」あたしもトランスだって知ってた?....言えなかった「今日だけ、15分だけ、お友達になってくれない?この後の謝恩会で」「面白いこと言うね。じゃあ、しばらく一緒にいようか」謝恩会では、約束通り、15分くらい、べったりと行動してくれた。美弥ちゃんもいちいち「あたしの隠れファンがいるって発覚してね、この子、絵理ちゃん」なんておもしろがって、他の子にあたしを紹介してくれる。「ありがとう、思い出になった」美弥ちゃん、あたしがトランスだって気付いてたか、わからない。でもそれでも良い。




