第三十話:後日譚5 新しい命の誕生
「オギャアアア! オギャアアア!」
二つの力強い産声が、聖護隊の特別医療室に響き渡った。
長い陣痛の末、ようやく訪れた安らぎの中、マダム・ローズが慣れた手付きで産湯を使わせ、白い布で小さな体を包み込む。
「リオナ、よく頑張ったわね」
「ローズ様、ありがとうございます……」
汗に濡れた髪を払い、リオナは荒い息を整えながら微笑んだ。
その直後、待ちきれないとばかりに扉が勢いよく開かれた。
「「リオナ!」」
カイルとシオンが、血相を変えて飛び込んでくる。
二人の顔は蒼白で、まるで自分たちが出産したかのように消耗していた(主に廊下での口論と心労で)。
「駄犬、忠犬。静かにしなさい! 産まれたばかりの子が驚くでしょう」
ローズの一喝に、S級ガイド二人がピタリと足を止める。
ローズは呆れたように息をつくと、その腕に抱いた二つの包みを、恐る恐る近づく父親たちに見せた。
「ほら。……あなた達のお父さんですよ」
「「!!」」
二人は息を呑み、覗き込んだ。
そこには、奇跡のような光景があった。
ローズの右腕に抱かれているのは、産毛ながらもはっきりと分かる、陽光のようなプラチナブロンドの髪を持つ元気な男の子。
そして左腕に抱かれているのは、とろりとした蜂蜜のようなキャラメルブラウンの瞳を輝かせる、あどけなくも賢そうな女の子。
誰がどう見ても、疑いようのない「証拠」がそこにあった。
「「……あ」」
カイルとシオンは顔を見合わせ、そして再び子供たちを見て、言葉を失った。
カイルの口がぽかんと開き、シオンの冷静な瞳がかつてないほど揺らいでいる。
DNA鑑定など不要だ。生命の神秘とS級の遺伝子が、雄弁に答えを語っていた。
ベッドの上で身を起こしたリオナが、そんな二人の様子を見て、悪戯っぽく、けれど慈愛に満ちた声で告げる。
「ふふ。だから言ったでしょう? ――両方、私の子よ」
その言葉に、ようやく我に返った二人の父親は、感極まったように膝から崩れ落ち、そして歓喜の涙と共に、愛する女王と子供たちに手を伸ばしたのだった。




