第三十一話:後日譚6 双星の共鳴
数年後の、ある晴れた日の庭園。
そこではいつものように、二人の父親による低レベルな争いが繰り広げられていた。
「おいレオン! 剣の握り方がなってないぞ! 俺の息子ならもっとこう、気合でぶつかるんだ!」
「何を言っているのですか、カイル。セレン、貴女はあんな野蛮な剣術を見てはいけませんよ。もっと優雅に、相手の精神構造を解析するのです」
カイルは木剣を持つ息子のレオンに熱血指導をし、シオンは娘のセレンに座学を説いている。
互いの教育方針が気に入らない二人は、子供そっちのけで睨み合いを始めた。
「あぁン? シオン、お前の教育は理屈っぽくてつまんねぇんだよ!」
「貴方の教育は脳筋すぎて将来が心配だと言っているんです」
ギャーギャーと騒ぐ父親たち。 しかし、当の子供たちは、そんな父親たちを無視して、二人だけの世界にいた。
「……ねえ、レオン。パパたちがまた喧嘩してる」
「うん、セレン。うるさいね」
5歳になったレオン(プラチナブロンドの髪)と、セレン(キャラメルブラウンの瞳)。
二人は示し合わせたように顔を見合わせると、繋いだ手に力を込めた。
「レオン、あそこの木、邪魔だよね?」
「うん。僕がどかすよ。……セレン、手伝って」
その瞬間だった。
レオンの体から、子供とは思えない密度の黄金の魔力(ガーディアンの力)が噴き上がった。
通常なら制御できずに暴発するはずの力。しかし、即座にセレンが琥珀色の瞳を細め、レオンの手を通して、冷涼な水の波動(ガイドの力)を流し込んだ。
――キィィィィン!
二人の波長が、恐ろしいほどの精度でシンクロする。
言葉も、視線すらも必要ない。ただそこにいるだけで、互いの魂がパズルのピースのようにカチリと嵌まる感覚。
「「えいっ!」」
ドォォォォン!! 可愛い掛け声と共に放たれた衝撃波が、庭の大木を根こそぎ吹き飛ばした。
その余波で、喧嘩していたカイルとシオンが「うわぁっ!?」と吹き飛ばされ、芝生に転がる。
「な……なんだ、今の威力は!?」
「レオンの出力に、セレンの制御が……完全に、同調していた……?」
起き上がった二人のS級ガイドは、呆然と子供たちを見つめた。
二人の父親ですら、リオナとここまでの同調率を出すには、深い接触と時間を要した。
それを、この幼い兄妹は、呼吸をするように自然に行ってのけたのだ。
テラスで優雅にお茶を飲んでいたマダム・ローズが、扇で口元を隠してクスクスと笑う。
「あらあら。血の繋がりよりも濃い、魂の繋がり……。まさか、この子達……」
その言葉に、リオナもまた、微笑みを深めて頷いた。
「ええ、恐らくは。……『運命の絆』ね」
「「はぁぁぁぁっ!?」」
カイルとシオンが絶叫する。
異父兄妹で、パーフェクトマッチ。倫理的にも、父親たちの心情的にも、頭を抱えたくなる事態だ。
「ま、待て! レオンとセレンは兄妹だぞ!?」
「確率論的にも遺伝子的にも、そんな事例は……! いけません、私は認めませんよ!」
慌てふためく父親たちをよそに、レオンとセレンはニコニコと笑い合い、ギュッと抱き合った。
「レオンは私の半身だもん!」
「セレンがいないと、僕の力は出せないんだ!」
二人の間には、誰も入り込めない絶対的な世界が完成していた。
リオナは、騒ぐ夫たちを尻目に、空を見上げて呟く。
「ふふ。……未来のことは、この子達が決めるわ。私たちはただ、その最強の二人を見守るだけよ」
新たなS級の、しかも禁断で最強のペアの誕生に、聖護隊の(主に父親二人の)胃痛はまだまだ続きそうだった。
――こうして、女王陛下と二人の騎士、そして双星の子供たちの物語は、いつまでも騒がしく、幸せに続いていくのだった。
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