第二十八話:後日譚3 一日の終り
「ははは……誠にお強いようですな」
要人は引きつった笑みを浮かべ、ハンカチで額の脂汗を拭った。襲撃者よりも、私の後ろに控える二人の騎士(魔王)の方がよほど恐ろしいのだろう。
「お騒がせして申し訳ありません。さあ、参りましょう」
私が優雅に微笑んで促すと、要人は何度も頷き、逃げるように会場へと急いだ。
その後、会談は何事もなく終了した。……というより、会場の外でS級の威圧感を放ち続けるカイルとシオンのせいで、不穏な動きをしようとする者が一人もいなかったと言うべきか。
◇
そして、夜。
任務を終え、屋敷に戻った私たちは、最も安らぐ場所――三人共用の寝室にいた。
「なぁ、今日の俺、最高にかっこよかっただろ? あの炎の制御、完璧だったよな!」
「何を言っているのですか。私の氷結魔法の方がスマートで無駄がありませんでしたよ。リオナ様、私の剣捌き、見ていてくださいましたか?」
ベッドの上でも、二人の小競り合いは続いていた。
カイルが私の右腕に頬ずりすれば、シオンが私の左手を両手で包み込んで対抗する。
外では最強のS級ガイドたちが、ここではただの構ってちゃんだ。
「俺が右側で寝るんだよ! 今日は俺の番だろ!」
「昨日も貴方でしたよ、カイル。今日は私がリオナ様の鼓動を一番近くで聞く権利があります」
右だ左だと騒ぐ二人に、私は小さく息を吐いた。
任務の疲れもあるだろうに、私に関しては底なしの体力を発揮する彼らには呆れるばかりだ。
けれど、そんな騒がしさこそが、私の幸せな日常なのだ。
「……二人とも」
私が少しだけ声を低くすると、二人は弾かれたように口を噤み、私を見た。
「任務、お疲れ様。二人とも、とても素敵だったわ」
私が微笑むと、カイルの顔が赤くなり、シオンが嬉しそうに目を細める。
「だから……もう、静かにしなさい」
私はベッドの中央に身を沈め、両手を広げた。
「……こっちにいらっしゃい。今日は二人とも、私が可愛がってあげる」
その言葉は、どんな魔法よりも劇的に効いた。
二人のS級ガイドは、瞬時に忠実な愛犬(と狼)の顔になり、競い合うように、けれど私の体を気遣うように優しく、その身を寄せてきたのだった。




