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第十九話:夜が明けて

「今回の誘拐事件の首謀者であるルーク・カイラスの身柄ですが」


 翌朝、聖護隊拠点より、リオナ誘拐事件の顛末がマイルズ総隊長に報告された。

 S級能力者の人体実験を行っていた施設は全壊、今回の事件にかかわった者たちはすべて捕縛することができた。

 死人こそ出なかったものの、甚大な被害だったと言ってよい結果だった。


「ああ、まったく我々の詰めが甘かったばかりに申し訳ないことをした」


「マイルズ総隊長、貴方も変わらないわね。使えない部下ばっかりで大変ね」


「……返す言葉もないな」


 ローズの言葉にマイルズ総隊長は頭を下げた。


「あのマッドサイエンティストは私が責任をもってそちらに連れて行くわ」


「頼む。処分はこちらで行わせてもらおう。今度は遺恨の残らないよう厳罰に処するよ」



「リオナはまだ寝ているのかしら?」


「……っ!」


 リオナの名前が出た途端、カイルの手からカップが滑り落ちる。


「あらあら。駄犬ったら、何を慌てているの? 顔真っ赤になっているわよ」


「なっ……何でもない!」


 盛大に挙動不審なカイルの顔をローズは覗き込んだ。

 そして、手にしていた扇をカイルの首元に当てる。


「――昨日の夜はちゃんと役目を果たしたようね?」


 襟に隠れていた小さな鬱血の痕に含みのある笑みを浮かべた。 


「――っ!」


 ローズの言葉に返答できず、カップだけ拾うとカイルはキッチンに姿を消した。


「まったく、大の男が「共鳴の儀式(ガイディング)」しただけでああもおかしくなるなんてね」


 キッチンからも盛大に物が落ちる音が聞こえてきた。

 思春期の青少年でもあるまいし。ローズは鼻先で軽く笑った。


「我々『共鳴者(ガイド)』にとって「運命の絆(パーフェクトマッチ)」は何にも代えられない相手ですから、カイルでは仕方がないかと」


 冷静に昨夜、カイルがリオナの「共鳴の儀式(ガイディング)」を行ったことについてシオンが擁護した。


「貴方はどうなのかしらね、シオン?」


「……私は教育補助としてリオナ様に関わっただけですので」


 柔和な笑みからは内心を読み取ることができなかった。

 カイルのみならず、シオンもリオナに対しての思い入れが並々ならないはず。リオナとカイルが「運命の絆(パーフェクトマッチ)」であるとはいっても、気にならないはずはなかった。


 ローズはシオンの琥珀色の瞳をじっと見つめ、小さく笑った。


「教育補助ね。貴方の奉仕は、少々粘着質すぎるきらいがあるようだけれど?」


「……」


 シオンは返答せず、そのまま部屋を出て行った。


「ふぅ。貴方は貴方で難儀ねぇ」


 ローズは小さくため息をついた。

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