第十六話:覚醒
リオナの魂は、カイルの激しく、熱く、全てを支配しようとする愛の波動に包まれていた。
それは命を繋ぐには十分だったが、カイルの支配しようとする意思とリオナの自立しようとする意思が衝突し、さらなる嵐となり吹き荒れた。
(このままじゃ、駄目。誰か、この炎を鎮めて。私の魂を、歪みなく、あるべき姿へ導いて。……騎士の光……私を道具ではなく、一人の守り手として完成させる貴方の波動が必要よ……シオン……!)
「……リオナ、様?」
シオンは、外部からカイルとリオナの荒れ狂う波動を感じ取っていた。
その中で、一筋の極めて細く、しかし切実な「助けを求める波動」が、直接、彼の魂に突き刺さった。それは、ローズの通信や命令とは全く異なる、リオナの悲鳴だった。
(リオナ様……!? この波動は彼女の魂からの切望……カイルの共鳴の儀式では、女王の安定は達成されない……! 私の理性をもってしても、彼女の命令に背くことはできないが……その魂の叫びを無視することもまた、騎士の不名誉……!)
「シオン! 駄犬の波動が暴走し始めているわ! 貴方の理性を注入しなさい!」
「はっ!」
もはやシオンに迷う余地はなかった。
(リオナ様、貴女の魂の切望こそ、私に与えられた究極の使命。この身と魂、全てを捧げます!)
カイルの激しい炎のようなプラチナブロンドの波動と、シオンの冷静な水のような琥珀色の波動が、リオナの渦巻く金色と白銀の波動を包み込み、荒れ狂う力の嵐が徐々に静まっていった。
暴れる炎が、理性的な水の力で制御され、静かに力強い安定した魔力へと変貌する。
カイルとシオンの二重ガイディングにより、リオナの波動が安定に向かい、黄金と白銀の光が施設を満たしていった。
その強い光の中心にあるリオナの肉体を薄い膜が覆っていた。これまでレオナの能力を隠蔽していた枷が、カイルの炎とシオンの水の融合した完璧なバランスの波動により、亀裂が入る。
ルーク・カイラスが計器の異常反応から、それに気づく。
「まさか、これがアウローラ・セレネの最後の仕掛けなのか……!?」
それこそが、リオナの母が命をかけて施した最後の封印だった。
叫びに呼応するようにリオナが覚醒する。 その瞬間、リオナの意識に懐かしい声が語りかけた。
『リオナ……あなたは、誰の支配も受けない、真の女王です。 私たちは、呪われた S級の運命を終わらせるために、この力を貴女に残しました。どうか、愛する共鳴者の導きを受け入れなさい。その力は、貴女の支配の道具ではない。貴女への、愛の贈り物です……。貴女の未来は、呪いではなく、祝いなのだから……』
「――分かったわ、お母様」
リオナは目を開くと、母からの言葉に力強く頷き、その決意を強固にする。
「私は私として覚醒した。私の力は、誰の支配も受けない」
光が収束し、リオナは完璧に安定した精霊の守り手として、台座から立ち上がる。彼女の瞳は、絶対的な威厳に満ちていた。
「馬鹿な……! 二人のS級共鳴者の波動を、完璧なバランスで受け入れただと!? 支配不能! 彼女は、私たちが狙った呪いを、真の力に変えてしまった!」
ルークは絶望に顔を歪ませる。
リオナの精霊の守り手として最初の裁定の時が来た。




