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第十三話:奪還作戦、始動!

「ユリシーズ、貴方はここに留まり、通信と治療の準備を。シオン、貴方は私の傍で、カイルの暴走制御と作戦の遂行を。そして――」


 ローズは、美しく整えられた唇を、冷たく歪ませた。その視線は、憎しみと焦燥に駆られるカイルに向けられる。


「カイル・ブランドン。貴方の図体が大きいだけの力を、無駄にしないことよ。貴方に許されるのは、最短でリオナの元へ到達し、障害を全て破壊することだけ。我が猟犬たちよ、突撃なさい!」


 カイルは、屈辱に顔を真っ赤にしたが、リオナを失う恐怖と、今やローズに完全に握られた魂の制御権には逆らえない。彼は、地面を蹴った。


「了解だ!」


 S級ガイドの肉体能力と、リオナを求める狂気的な焦燥が合わさり、カイルは弾丸のような速さで、研究施設跡地の分厚い外壁目掛けて一直線に走った。


「くそっ!」


 カイルは、ガイディング波動を高出力の爆発的なエネルギーへと変換し、外壁に叩きつける。轟音と閃光と共に、壁はバターのように容易く吹き飛び、内部への突破口が開かれた。


「カイル隊長、速すぎます! 敵のセンサーを完全に無視しています!」


「構わないわ。(カイル)の役割は、獲物を追うことよ。シオン、貴方は冷静に後を追い、ルートを確保なさい。私も行くわ」


 ローズは優雅に外壁の穴を通り抜ける。彼女の波動は、カイルの破壊の跡を通過しながら、周囲の魔力の流れを読み取っていた。


「ふむ。精神特化の結界が張られているわね。ユリシーズ、聞こえているかしら? 私たちに純粋な精霊力を流し込みなさい。リオナに繋がる通路を浄化するわ」


「承知いたしました、ローズ様! 私の魂の全てを捧げ、ルートを浄化します!」


 通信機越しに、ユリシーズの熱狂的な声が響いた。


 ユリシーズの清浄な波動が、カイルの開けた通路に流れ込み、敵が仕掛けた精神攻撃のトラップを次々と霧散させていく。


「完璧な連携です。カイル隊長、我々はB-3セクターを進みます。リオナ様が拘束されていると思われる場所への最短ルートです!」


 カイルはすでに施設の奥深くまで突入し、敵の最初の防御部隊と交戦していた。


「邪魔だ! 退け、この忠犬(カイル)が通る!」


 カイルの共鳴の儀式(ガイディング)波動は、敵のセンチネルたちの防御結界を一瞬で蒸発させ、彼らを戦意喪失へと追い込む。リオナを求める純粋な力は、狂信的なまでに強大だった。



 その頃、カイルたちが向かう研究施設の最深部でリオナ・レヴァントは、拘束具に繋がれ、台座の上に座らされていた。

 周囲には、複雑な魔力増幅装置と、敵のリーダーであるルーク・カイラスと数人の守り手(ガーディアン)たちが立っている。


 リオナの体からは、安定した、強大な力の波動が、強制的に装置へと吸い上げられていた。


「……やめて! 私の、魂を……汚さないで……!」


 ルーク・カイラスは満足げな笑みを浮かべ、装置を調整する。


「無駄だ、リオナ・レヴァント。貴女の無駄な抵抗も、まもなく終わる。貴女の能力は、貴女の両親が残したこの最高の研究によって、私の完全な支配下に置かれる。貴女は、世界を支配するための、最高の道具となるのだ!」


 その時、施設全体が激しい揺れに襲われた。遠くで聞こえる轟音と、破壊的な波動が響く。


「何事だ!?」


「カ、カイラス様! 外部からS級の襲撃です! 一瞬で外壁が……! 波動から見て、カイル・ブランドンです!」


 ルーク・カイラスの焦燥が顔を歪ませる。


「馬鹿な! あいつの情緒は不安定なはず! なぜこれほどの統制された破壊力を……!?」


 リオナは、意識の奥底で、その波動を感じ取り、わずかに微笑む。


「……カイル……」


 リオナの魂に、遠くから破壊的な波動が、「必ず救い出す」という激しい意志と共に流れ込んだ。その愛憎の混じった激しいガイディングは、敵の精神支配を一時的に揺るがせる。


「くそっ! リオナの覚醒が早まっている! 装置の出力を最大にしろ! 支配を急げ!」


 ルークは、リオナを完全に支配すべく、儀式を加速させる。


 戦闘は秒単位の攻防戦に突入した。

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