竜女ってなぁに?
ハクジが話してた竜女という存在。
なんとなく気になるので詳しく聞いてみる。
「なぁ、ハクジ」
『なんだ』
「竜女って何? 竜神に気に入られてるとか、辰年とか、そういうことじゃないんだよな?」
一族を終わらせる役目を負ってるって言ってたけど。
『好まれる者は大抵同じ特徴を持つといわれておるが、そうではない。竜神が選んだ者が生まれ育つと、その特徴を持つのだ。稀に竜神に好まれる気質を持った者がおる。竜神の加護を受けることもあるが、その者が竜神の好みから外れてしまえば加護は失われる』
「気に入られるのはあると思ってたけど、生まれる前からとか、そんなに前から選ばれんの?」
生まれる前からとかすごいな。
先天的? と違って後天的な場合は、竜神の好みから外れれば加護を失うのは納得。っていうか、こっちが一般的なイメージ。
『特に今日見た店の主は竜の気が強かった。あの者が望めば神成りも果たしたであろうな』
「え、拒否できんの?」
魂が磨かれていったらそうなるんだと思ってた。拒否権なしで。
『あの者が何故あの場に留まっておるのかは分からぬが、あの場から解放された時には竜神に吸収されるのであろう』
「吸収……」
『望んだ場合のみそうなる。竜神は好き嫌いが激しいが、気に入った者をそれはそれは大切にする。その力が強すぎるのが玉に瑕だがな』
吸収が強制じゃないみたいで安心した。
「強すぎるとどうなんの?」
『子を持てぬ』
「それが一族を終わらせるに繋がるってこと?」
それ、終わらせる役目っていうかさ……。
『一族を終わらせる役目を持つ者には強い決断力が必要となる。だからこそ竜神が加護を与えるのだ』
「あぁ、そういうことか」
一族を終わらせるってことは血が絶えるってことで、その決断をするには力が必要だから竜神が加護を与えて、竜神の強い力が入ると子が持てなくなる。うぅーん。
「それって、どうなの」
『血を絶やさぬことが良いこととは言えぬ。役割を終えるということは、その枷から一族が解き放たれるということだ』
ふと、オレの前世から始まった犬上家のことを思う。
「犬上家にも役割あるよな」
オレの前世が望んだ、皆の苦しみが和らぐように、犬神と悪霊を祓い続けるというもの。
『そうさな』
「当のオレは子孫に押し付けちゃうことになるわけだけど」
もう生まれ変わらないらしいし。
「氏神になるのだ、押し付けではない」
「そういうもの?」
それならいいんだけどさ。
『そなたは竜女に同情しているようだがな』
「うん、なんとなく」
子供を持ちたい人だっているんじゃないの? とか思っちゃって。
『だからこそ生まれる前から加護を授けるのだ』
「もしかして、竜女って子供を欲しいと思わないってこと?」
『そうだ』
それで納得がいった。
そうか、そうなるように生まれる前から竜神の加護? が授けられるんだもんな。
「なんか……うん、そうか」
『あの主は竜神に吸収されるのを拒むために留まっているようではなかった』
「そんなのも分かんの?」
ドーナツ食べただけなのに?
どうなってんの?
『気が淀むことなく流れておった。あれだけの竜の気。もし竜神から逃れるためにあの場を作ったのであれば、あぁはならぬ。何かしらの目的のためにあの場に留まり、なすべきことを果たしたなら、消えるのであろう』
「なんつーか、色々あるんだな」
神成りしてもおかしくない人が、死後も何かしらの目的のためにこの世に留まってて、しかもそれを竜神も反対してないっぽいし?
「そういえば、竜神の加護を受けた人の特徴ってどんなの?」
『水の加護を得るのでな、雨女や雨男と呼ばれるほどには水が共にある。泳ぎを教えられずとも片抜きや諸抜きで泳げるが、平泳ぎや背泳ぎは出来ぬ』
「片抜きとか諸抜きってなに」
『少し異なるが、そなたらの言うクロールのようなものだ』
「あぁ、クロール」
教えられてないのにクロールはできんのに、平泳ぎはできないんだ。なんかおもろ。
『好奇心旺盛で、人の上に立つ気質を持つ』
皇帝が竜を好むのがなんか分かるな、そこだけ聞くと。
『他にもあるがな、大体そういったところだ』
「なるほど」
今日見たあの店長さん、なんていうか、不幸そうに見えなかったな。楽しそうでもなかったけど、なんつーか、自然体っていうか。
『あの輪の菓子だがな』
「ドーナツ?」
『竜気が込められておる故に、邪を払えるのだ』
「ごっついの入ってた!」
強そう!
それからハクジやしろあん、レラちゃんが好むのも分かるし、悪霊に憑かれた人が気力を取り戻せたのも納得!
『うむ。竜気が込められておるということは、あの主に加護を与える竜神が助けておるのだろう』
知れば知るほど不思議な存在なんだけど!
「そこまでしてやろうとしてることってなんなんだろうな」
『役目は終えておるようであるからな、本人の願いなのだろうがな』
竜神が加護を与えた人間を大切にしてるっていうのが伝わってくるなぁ。
死んでからも叶えたいことのためにこの世に留まっているのを助けてるんだもんな。
「オレも、手伝えることならいいんだけどな」
ハクジから肉球パンチを食らった。
『そなた……』
険しい顔のハクジ。
「え? オレ何かやっちゃった?」
『今のそなたの言葉は誓として竜神に受け止められたぞ』
「え?」
うけひ?
『これであの者とそなたは縁づいた』
「…………ごめん?」
こんなに離れてるのに、そんなのありなの?
『神の前に距離など意味があるものか』
「ごめん……」
『まぁ良い。元より導かれたようなものだ。遅速はあれどそうなっておったろう』
それってつまり、元々そうなるはずだったってこと?
竜神が選んだ存在が、生まれてから竜女になるって言ってたな……ってことは、オレ達があの店に行ったのも……?
えっ、竜神って策士ー。




