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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第八章 黒の落失
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8/29 清々しいまでに、(エルシオ視点)


 僕を含め、室内には動揺が走った。だって、『メリィをコナツさんにつける』ということは、シャロンの専属がいなくなる、ということだからだ。


「お嬢様! それは承諾できかねます」


 いの一番にメリィが反論をする。当然だろう、彼女は幼少期からずっとシャロンの専属侍女で、狂気を感じる努力によって『影』筆頭に上り詰めた女性だ。どれほどコナツさんが使用人の皆と意気投合する『いい人』であっても、彼女たちの根本はシャロンと僕が第一なのだ。


 そんなことはシャロンもよくよくわかっているだろうに、それでも彼女はにっこり、笑った。


「あら、ダメよ、メリィ。私よりもコナツの方が危なっかしいもの。もちろん兵の皆も飛び切り優秀で、優秀すぎて困惑するくらいだけれど、……『侍女』としてコナツに付き添って怪しまれずにいつでもどこでも守れるのはあなたしかいないわ。メリィならコナツも親しみを持っているしね。彼女は事故でこちらに来てしまった被害者よ? こちらの世界の事情に巻き込むのだから、守りは万全にしなければならないわ」

「ですが……っ」


 笑うシャロンの言うことは、もっともだ。けれど感情が納得できないのだろう。メリィは食い下がろうとした。けれどその唇にそっとシャロンは人差し指を当てて遮る。


「だぁめ。……大丈夫よ。アリィはエルの専属だけれど、私の主な行動範囲は屋敷と、学院と、王城……あとは商会と研究所くらいかしら? エルの行動範囲とほぼほぼ同じよ。平時ならばその限りではないけれど、今はさすがに自重ぐらいするわよ?」

「お嬢様……」


 シャロンの指がそのままメリィの唇をつうっとなぞる。少し頬を染め、けれどもメリィは眉を下げる。助けを求めるように僕を見るので、僕も一応、言っておいた。


「まあ、行動範囲は同じだと思うけど、ずっと一緒にいるわけじゃないよね? 僕とシャロン、仕事内容も違うし」


 しかし返ってきたシャロンの笑顔は素晴らしく輝いていた。


「まあ、そうね。でも調整次第でどうにでもなるわよ。――そもそも、」


 ふっと、輝く笑みをさらに深めて、シャロンは部屋の面々を見渡す。



「この私に害をなそうとする輩がいたら、逆にほめて差し上げたいわね。……その度胸を」



 きらきら輝く笑顔だったけど、一瞬だけのぞいた冷笑にすさまじく悪寒が走った。


「……ああ、うん。そうだね。僕もそう思う……」


 僕は腕をさすりながらそれだけ返す。メリィたちも渋々、納得はしたらしい。まあ、基本王都から出なければアリィの守備範囲だというのもあるだろう。……それ以上に、シャロンがシャロンだからというのが一番だけど。だって今のけっこう大分、常軌を逸した集団に成り果てつつある僕らの『影』含めた使用人さんたちを育て上げたのはシャロンだ。知らないうちにどんどん実力を上げてはいるけど、基礎を叩き込み今も請われて指導を怠らないのは、シャロンなのだ。


 そして物理的に最古の『魔』であるエイヴァ君に圧勝できるのも唯一シャロンだけだ。そのシャロンを襲うとか……狂気の沙汰だと僕は思う。シャロンって多分、普通に一人で一国滅ぼせると思うんだよね。それに立ち向かうには少なくとも一大軍隊が必要だと思うけど、そんなに敵が殺到したら暗殺も何もないよね……。


「ふふ、心配してくれてうれしいわ。でもやるべきことを見失ってはいけないわ。……頼んだわよ?」

「――まあ、そうだね。現状、シャロンに手を出すとも思えないし、明らかに危険があって、自衛の手段を持たないコナツさんを守るにはこの配置が最善だよ」


 シャロンの言葉にうなずいて僕もメリィたちに言い聞かせる。


「はい。……差し出がましいことを申しました。このメリィ、しっかりとコナツ様をお守りいたします!」


 そう答えたメリィの瞳に、もう迷いは見られなかった。任せたからな! とばかりに双子の弟・アリィを見る視線もものすごく強い圧力があったけれど。そんなメリィにもちろん! と視線で返したアリィの気迫もすさまじかったけど。この双子は本当にぶれないよね……。


 と、僕はアリィたちを見てそんなことを思っていたが、シャロンは横でどこからともなく大量の『何か』を取り出して、言った。


「――ああ、そうそう。ルフ達にはこれを渡しておくわね」


 ぽん、と。差し出されたそれは、四角くて小さな、魔道具。ボタンがいくつかとランプが複数ついているそれは……、


「え、ちょ、それってジルファイス殿下に止められて開発中止した『無線機』だよね!?」


 僕は思わず叫んだ。しかしシャロンはいい笑顔でうなずいた。


「ええ、必要な数だけ用意したわよ」


 すがすがしいまでの肯定だった。












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