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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第七章 或る国の歪
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7/64 知らないものを垣間見るには(ルーファス視点)


 私はルーファス・ドレーク。ドレーク男爵家の長男だ。いつもであれば仕事として主に王太子殿下の護衛として足を運ぶ王城に、今日ばかりは客人・ドレーク男爵子息として招かれていた。


 本日の企画を言い出したのは私が尊敬するお方の一人である、ランスリー公爵令嬢・シャーロット様だ。無礼を働いた我々兄妹をその深く広いお心で許してくださり、あまつさえ我々を『互いに高めあう良き友人』として認めてくださったかの方は、あの時が実質初対面であっただろう私の妹・シアにも手合わせの機会をくださった。まだまだ未熟で粗削りなところも多いシアだが、シャーロット様との手合わせはあの子に確実に良い影響をもたらすだろうと確信している。


 そしてシアとの手合わせとともに、ご友人方とともに語らう場を設けられており、シアも参加させていただけるようだった。これまでどちらかといえば男に交じって鍛錬ばかり、女性の友人が少なく、華やかな場になじめなかったシアにはこれもまた良い経験となるだろう。初対面となる方もいらっしゃるようだが、シャーロット様のご友人方であれば間違いはない。


 その通称『女子会』の一方で、同時開催として企画されたのが現在、私も参加させていただいている、シャーロット様いわくの『男子会』である。


 こちらの参加者の方々もそうそうたる面々だった。わが主である王太子ラルファイス殿下、第二王子ジルファイス殿下、ランスリー公爵子息エルシオ様、フリード男爵子息にして現在話題の魔道研究所副所長、さらにフィマード伯爵令嬢の婚約者でもあるアーノルド様。そして『平民の天才』として昨年話題をさらい、ヴェルザンティア王立魔術学院にてシャーロット様・エルシオ様に次ぐ魔術・実力の実績を残されているエイヴァ殿。いずれも今後のメイソード王国を背負っていくに違いない方々であり、だれもがお近づきになりたいと切望している方々でもある。


 そこに私が護衛ではなく客人として組み込まれていることに違和感を禁じ得なかったが、王太子殿下は「気にするな」とばかりに微笑んでくださっていたし、ジルファイス殿下に至っては「もちろんあなたは参加しますね」とでもいうような圧力をどうしてだろうか、強く感じた。


 いずれにせよ、拒否権はなさそうだったこともあり、私はこの経験を身にすべく、全身全霊で臨むことを決めていた。


 そうして始まった『男子会』は、私の想像を絶して余りあるものだったのだ。……まあ、初めはあまりにあんまりなエイヴァ殿の殿下方への態度へ困惑したりもしたが……そろって許容されていらっしゃるご様子であったし、幼い言動ながらも特にエルシオ様とジルファイス殿下の言うことであればすぐに聞き入れていた様からも、何か私ごときには知らされぬ事情が彼にはあるのだろうと、同じく困惑をあらわにしていたアーノルド様とともに納得もしたりしていた。


 そして、そんなエイヴァ殿の言動も気にならなくなるほどのことが次々と起こったということも大きい。……エルシオ様とアーノルド様が提示された新しい魔道具には、心底感服した。


 いかんせん私……いな、我がドレーク男爵家そのものや、これまでかかわってきた同僚などがどちらかといえば『拳で語る』人間ばかりであったからか、柔軟な発想とたゆまぬ研究によって生まれるまさに秀逸としか言えない実用的な魔道具の数々には目からうろこだった。従来の使い捨てであり大きく重量があった魔道具とは一線を画した使い勝手の良さ。その機能の多様さ。頭の中では新たな戦闘方法や連携の組み合わせ、そのための訓練内容などが駆け巡っていた。


 ……そのまま興奮状態に陥り、エイヴァ殿と一騎打ちをしてしまって殿下方にもエルシオ様にもご迷惑をおかけしてしまったが……。エイヴァ殿の底知れぬ力にはシャーロット様にも近いものを感じた。その底知れなさに、おそらくは殿下方が彼を『特別扱い』する理由があるのだろうと察するほどには。そんな彼をほほえみでもって優し気に、正論で叱り飛ばすエルシオ様は絶対に怒らせてはいけないとも思ったが。


 また、常にどこからともなく表れてエルシオ様の命を、ことごとく端的に名を呼ばれただけで実行するアリィ殿にも舌を巻いた。というか、完全に気配を察することができなかった。護衛として致命的ではないかと自己嫌悪に陥るほどだ。彼が敵に回ればと考えるだに恐ろしい。殿下方ももちろんエルシオ様も、アーノルド様すらもなれているのか平然としていらっしゃったが、ランスリー公爵家にはどれほどの逸材が集っているのだろうか。


 そんな、感情の浮き沈みも込みの紆余曲折もありながら、しかし実に充実した時間を過ごさせていただいた。夕食も殿下方とご相伴にあずかり、『いつもと同じ場所』を『いつもと違う立場』から見ることでまた知りえることもあった。


 『男子会』は女性陣がランスリー公爵邸に宿泊するということを踏まえてこちらも一泊で予定が組まれている。それぞれに客室を与えられた。私には慣れた宿直室や騎士寮などもあるが……微笑む殿下方には逆らえる気がしなかった。今後もおそらく逆らえることはないだろう。


 そうして、寝室は別々ではあるが、寝るにはいささか早い時間。昼間の興奮もあり、少量の寝酒をおともに、皆様と談笑している、現在。魔術の話、魔道具の話、商会の話、学院の話、共通の友人・知人であるシャーロット様やイリーナ様、シルヴィナ皇女殿下やシアの話、と話題には事欠かず……その流れの中で、ごくごく自然に、不意に思いついたかのように、その話題を投下されたのは、ジルファイス殿下だった。



「――そういえば、ドレーク卿。皇女殿下の護衛騎士殿とは、いつから?」








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