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公爵令嬢は我が道を行く  作者: 月圭
第七章 或る国の歪
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7/61 あちらもこちらも、(ジルファイス視点)


 場所を王城に戻して、現在時刻は夜。シャロン曰くの『女子会』の名目のもと、帰るべきランスリー邸を追い出されたエルシオはもとより、自由奔放なエイヴァをシャロンのもとへ行かせないように押しとどめるためもあり、私たちも王城にて『お泊り会』なるものを開催していた。


 なお、昼間華麗に拉致されていったアーノルド殿は、私たちが王城に帰還した時にはすでに戻ってきていた。旧タロラード領でのひと騒動の間、エルシオ専属侍従・アリィは、実はひっそりとエルシオに付き従っていたのだが、知らぬ間にいったん姿を消してアーノルド殿を王城へと帰還させ、やはり知らぬ間に戻ってくるという所業をやり遂げていたらしい。エイヴァとドレーク卿への教育的指導に忙しく、『影』に徹する彼の動きにはまったく気づいていなかった。同様に気づいていなかったエルシオはぼそりと、独り言をつぶやいた。「暗殺者とか間諜になれるよね、君たち」と。私もそう思う、と心の中で同意しておいた。


 余談だが王城にて再会を果たしたアーノルド殿に拉致中の出来事を尋ねたところ「いえ、あの、内輪の騒動でして、その」と歯切れが悪いにもほどがある回答が返ってきたが、首から額まで紅色に染まった顔色からして婚約者であるフィマード伯爵令嬢と何かあったのだろうと察したので、あえて追及はしないでおいた。背後に控えていたアリィが生温いほほえみを浮かべてみていたのが印象深かった。


 ……ちなみに、そんな平和とは言い切れないが割と通常運転の範囲内である騒動を経て、現在は落ち着いて思い思いに休みながら時々騒いだりと、それなりにこのお泊り会の状況を楽しんではいるが、私たちが王城にそろって帰還するまでの間に、実はこの城内でちょっとしたひと悶着があったりもした。


 ――それは、エイヴァを今回王城でお守りすることになった際にも最大の懸念事項として挙げられた人物……私と兄の実祖父にして前国王。夏院君リグヴァルド・メイソードのことだ。


 あの旧タロラード公爵領で、主にエルシオと私がエイヴァを、兄がドレーク卿を叱り、言い聞かせ、愚行を繰り返さないように二人の骨身に刻んだ後。いい笑顔でエイヴァに懇々と常識を説くエルシオは控えめに言って幼児と保護者だったが、それはいつものこととして。


 何とか落ち着きを取り戻した私たち一行は、引き続き新魔道具を試用したり、その感想を伝えたり、常識の範囲内で模擬戦を行ったりしてそれなりに楽しんでいた。しかしそこへ、シャロンの部下を経由して、私に王城からの救援要請が伝えられたのだ。


 要約すると、リグヴァルド・メイソードが動いていて、私たち……ひいては私の友人たちに会いたがっている、ということだ。先日のシャロン然り「孫の友人に挨拶をしたい、せめて顔を見るくらいいいじゃないか」という主張をしているとのこと。


「……私たちの外出は陛下と王妃殿下以外には知らせていませんからね……」


 新魔道具の効果については現状、機密扱いなのだ。同行者にエイヴァが含まれているということもあり、応接室でおとなしく交流を深めているということになっている。変に勘繰られることを避ける意味合いもあるし、アザレア商会と魔道研究所の関係性、ひいてはエルシオがイコール『商会の取締役専務エイル・ラング』であるということは公開していない現在、エルシオとアーノルド殿が組んで『魔道研究所の研究成果であるアザレア商会の新商品』をお披露目にきているということを吹聴すべき事柄ではないということもある。


「陛下はどうされているのです?」

「はい、陛下はお嬢様とお坊ちゃま、そして殿下方が本日のために前倒しで仕事を仕上げられたために、山のように積みあがった書類を前にして敵前逃亡をされようとなさいましたが、瞬時に王妃殿下に看破され、素晴らしい笑顔の王妃殿下に連行されて現在執務室にこもっていらっしゃる様です」

「……そうでしたか」


 淡々と無表情で語るシャロンの部下。しかしその光景は目に浮かぶようである。ここ最近は現在も進行中の『森』の調査や魔物の氾濫(スタンピード)の後始末がまだ残っていることも含め、仕事は普段よりも多かった。それを私たちがそろって前倒しでこなせば、最終的に採決や認可する陛下の所に集まった時には筆舌に尽くしがたい量になっただろう。机仕事は不得手ではないが、本来の気性には合わない陛下のことだ。逃亡を計画し王妃殿下に阻止されるのは必然の流れだった。


「今はジルファイス殿下の部下の方々が夏院君閣下をお止めしていらっしゃるようですが、そろそろ厳しく……お手数ですがジルファイス殿下にお出ましいただけないかと……」

「なるほど……仕方がありませんね。エルシオ、少し、よろしいですか」


 シャロンの部下にうなずきを返し、私はそっと、エルシオを呼ぶ。そして軽く事情を説明すれば、すぐに私の要望を理解したようだった。


「わかりました。……ラルファイス殿下とドレーク卿のお二人だけにエイヴァ君を任せるわけにはいきませんから、僕はすぐに戻りますが……王城から再度こちらにこられるときには、うちの使用人に言づけていただければお迎えに上がりますね」


 そうして控えめにほほ笑むエルシオ。私は彼に礼を述べ、『仕事で早急に確認が必要であるため、一度城に戻る。すぐに終わるため、時間はかからない』とだけ兄とドレーク卿、エイヴァに告げて、転移魔道具を使用してまずエルシオ、それを追う形で私が城に戻った。私とエルシオが二人そろって居なくなることに若干駄々をこねそうだったエイヴァがいたため、私が無事城内に転移したのを見届けたエルシオは早急に旧タロラード公爵領に戻っていったが――まあ仕方がない。さすがシャロンの義弟ということか、エイヴァは一にシャロン、二にエルシオの言うことをよく聞くのだ。


 私もあちらに早く戻りたい。だから煩わしいことは早急に対処を終わらせようと、踵を返して『おじい様』のもとへ、向かった。






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