4.二次試験
「ではウィリオス・レセアージェンの第二試験を始める! 相手は私、シド・ベイナズが務める!」
「はい! ……えっ?」
反射的に返事をしたウィルは耳を疑う。
シドは現役の騎士長。
つまり、近衛騎士を含めて騎士の中で一番強いのである。
(瞬殺されたら……戦い方、どころじゃないよね……)
ウィルの頬を冷や汗が伝う。
「では、両者は規定の位置についてー」
進行を引き継いだと思しき、どこか軽薄な雰囲気を纏った金髪の青年が告げる。
アラン・モズルム。彼もまた近衛騎士であるが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
「んじゃ、始めー」
やる気のない合図と共に、第二試験が始まってしまった。
合図と同時、ウィルはとにかく全力のバックステップで距離を取った。
対するシドが様子を見るように剣を構えたまま微動だにしないのを確認し、今度は慎重に距離を詰めていく。
「――ていッ」
間合いにシドを捉えた瞬間、ウィルは霞むような速さの斬撃を放った。
並の兵士なら数人まとめて薙ぎ払えただろう一撃は、しかし容易く防がれる。
防御が必然的に甘くなった脇腹へ膝を打ち込み、躱されるも駄目押しで脚を伸ばしてシドのバランスを崩しにいく。
体勢を整えようとしたシドの首筋を剣の柄で狙い、兜で防ごうとした所にウィルは頭突きをしようと小さく頭を振りかぶり――
――そこまでがフェイント。
敢えて頭突きを空振らせると、カウンターの剣がちょうど眼前を通り過ぎるところだった。
「やッ!」
すかさず全力の刺突を放つ。
シドは強引に後退して凌ぐも、ウィルは剣を手放してその回避より更に強引に距離を詰める。
その双掌から放たれた奥の手は、ありったけの力を込めた雷箭。
このタイミングで切ったウィルの切り札に、シドは年齢を感じさせない獰猛な笑みを浮かべた。
鋼色の輝きを纏った蹴り足が雷箭を打ち砕く。
更に、一瞬で体勢を立て直したシドは加速した動きで逆襲に転じた。
ウィルは一縷の希望に懸けてその横を駆け抜けようと――
……流石に、そこまで甘い相手ではなかった。
「参りました……」
首根を抑えられたウィルは、素直に白旗を振ったのだった。




