9.先輩
「あれ、君は?」
部屋の一つから出て来た茶髪の青年がウィルに呼びかける。
「あ、初めまして! 私は本日より隣の部屋でお世話になります、ウィリオス・レセアージェンと申します」
「ご丁寧にどうも。ボクはオルパ・ケイディオ。一応君の先輩にあたる、かな。宜しく」
「宜しくお願いします。では、今日はこれで失礼しますね」
「うん、また明日~」
その翌朝。
「おはようございます」
「ぅわ!?」
オルパが驚いたのは、ドアを開けた瞬間ウィルが目の前に立っていたからだ。
もしこれがウィルでなく刺客だったら、オルパはこの瞬間死んでいてもおかしくない。それで良いのか近衛騎士。
「君は確かウィリオス君だっけ。……どうしたんだい?」
「私は重度の方向音痴でして……食堂までご一緒したく」
「なるほどね。ああ、ウィリオス君もそんなに硬くならなくて良いよ」
「ありがとうございます。あと、僕のことはウィルで結構です」
「了解。改めて宜しく、ウィル君」
ウィルが忙しく朝食を平らげていると、不意に連絡用の水晶が振動した。
「どうしたんだい?」
「えっと……叙勲式が、一日遅れるみたいです」
「ああ、そうか」
ウィルの言葉に、オルパは何か心当たりがあるように頷く。
「それにしても……僕は、何をしていれば良いんでしょう?」
「無いんだな、それが」
「えっ?」
「ゴメン、流石に盛り過ぎた。城の巡回くらいは割り振られてる」
「その……他には?」
「交代で『西』に行ったり、護衛として式典に出たりするけど……この時期は新人の訓練が全部だね。まあこの辺りは平和だし、ぶっちゃけ暇だよ?」
「そう、なんですか……」
恐る恐るといったウィルの質問に、オルパはふにゃっとした笑みを浮かべて答える。
「ちなみにボクは空き時間は適当に訓練して、それ以外は街に出て食べ歩きしてるよ。他の近衛騎士は……まあ各自訓練してるのは同じだけど、書庫に籠ってひたすら本を読んでるのとか、詰所に押しかけて兵士とギャンブルしてるのとか、かな。事務所にちょっとした依頼が来てることもあるから、気が向いたら行く場合もあるね」
「なるほど……」
「あ、そういえば今日はボク巡回があるんだよね。これも何かの縁だし、ついて来る?」
「は、はい! お願いします!」
こうしてウィルは巡回ついでに城を案内してもらったのだった。
手描きの地図にオルパが絶句していたのは余談である。




