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第六章 世界最強の女、そして……客が嫌いな山

世界最強の女、ハザエ・イシザキ、十七歳。

最強なのに、彼氏ができない。


ハイテンション・コメディ連載中!


作者X : @Sora_no_TENKAI

代表作『Tenkai』は完結まで毎日投稿中!

本作『世界最強の女、彼氏ができない』は毎週水曜・土曜22時更新です。


※下ネタあり。おならは『ブウウウウッ!』って鳴ります。


咆哮は十一秒続いた。


わかる。サイが数えてたからだ。大声で。数えれば安心できるって言ってた。

怖い時に怖くないフリをするために海賊が言う類のやつだ。


その十一秒で、あたしの仲間について三つ学んだ。


一つ目、ジロは怖い時、逃げない。登る。

反響が消える前に、もうタラの肩にぶら下がってた。目を閉じて、首にしがみついて、すごく大きくてすごく我慢強い木を見つけた怖がりの猿みたいに。

タラは帝国が崩れ落ちるのを見てきた彫像の忍耐で、それに耐えてた。


二つ目、世界の終わりの前で、サイは計算をする。


「もし山が爆発したら」


彼女は、震える手で契約の巻物を引っ張り出しながら呟いた。


「ギルドの保険、自然災害はカバーするのかしら? 火山の噴火は技術的には自然災害よ」


「サイ! 山が今吠えたんだよ!」


「正当な質問よ! 条項があるの!」


三つ目、本当にヤバい時は、レンはもっと黙る。

彼は膝をついて、熱い地面に掌を開いて当てて、目を閉じて、他の誰にも聞こえない何かを聞いてた。石に耳を当てても聞こえないようなことを。


「攻撃じゃない」


やっと、そう言った。


「どうしてわかるの?」


あたしは聞いた。


「攻撃なら、地面は本当に割れてる。これは……」


彼は言葉を探した。語彙が少なくて世界が広い人間の探し方で。


「呼び声だ」


「誰への?」


レンは答えなかった。ただあたしを見た。

そしてあたしは、それ以上の説明なしで理解した。すごく腹が立った。


モチは自分のサイズには不釣り合いなほど大きな声で二回連続でくしゃみをして、あたしの膝に丸まって、何もなかったみたいにまた寝た。

竜の赤ん坊って、眠い時は終末を無視する立派な能力を持ってる。


沈黙が戻ってきた。咆哮よりタチが悪いやつが。


---


眠れなかった。


火を小さくした焚き火のそばに座って、火山を見てた。カダヴァルを隣の石に立てかけて。

頂上の赤い光はまだ脈打ってた。ゆっくり。リズムを持って。眠りの中で呼吸してる誰かみたいに。クルオルの血管みたいに。


『話してくれる?』


剣はすぐに答えなかった。答えた時、声は鋭くなかった。


『あたしも全部は知らないの』


「それ答えになってない。誤魔化してる」


『それしか持ってないの。そして持ってないのが嫌いなの』


待った。彼女が冗談なしでこんなに長く黙ることは滅多にない。髪型とか、逃げた求婚者とかの冗談なしで。


『長い間眠ってたのよ、ハザエ。どれくらいか測れないくらい。覚えてないことがあるの。灰に覆われた記憶が。でもあなたが柄に触れたあの日、あそこで……下にいるあれも動いたの』


「あれ」


『何かは言えないわ。でも見覚えがあるの。そしてそれが、あたしを落ち着かなくさせるの。あたしは簡単に落ち着かなくならないのに』


初めて、彼女の声に今まで聞いたことない何かを聞いた。

皮肉じゃない。プライドじゃない。挑発じゃない。

すごく古い疲れだった。山が生まれて死ぬのを見てきた者の疲れだ。


『やめなさいって言いたいの? ここから出て行けって?』


『いいえ』


返事は速かった。乾いてた。迷いなし。ちょっと怒ってるくらいだった。


『でも自分がどこを踏んでるか知ってほしいの。ここはただの熱い石じゃないのよ』


柄を両手で握りしめた。黒曜石は生温かかった。生きてる誰かの肌みたいに。熱があるみたいに。


「何があっても、あんたも、あいつらも、守るから」


『あなたがそんな声でそんなこと言うなんて、一番予想してなかったわ』


「わかってる。感傷的になってる。高度のせいだよ」


剣は黙った。でもその夜、脈動があたしの脈動に近く感じた。一緒に打ってた。

馬鹿げてる。剣に心臓なんてない。でもあたしの剣にはある。


---


アクラの夜明けは錆色だ。頂上の煙が低い雲と混ざって、太陽は灰色の汚れた空にぶら下がった熾き火みたいに見える。空気は朝から熱い。


タラが朝飯を作った。サイが昨日の夜と同じ外科的な正確さでパンを分けた。一つ一つのパンくずが公証役場に登録されるみたいに。

手を伸ばして蜂蜜酒のジョッキを探して、代わりにぬるい水の入ったジョッキを見つけた。


「誰が替えた?」


「あたしよ」


サイはパンから目も上げずに答えた。


「裏切りだよ。これは戦争犯罪だよ」


「健康よ。二日酔いで火山登るのは、伝説の狩人を剣付きの汗の水たまりに変える一番早い方法だもの」


「あたし耐性あるもん! 世界最強の女だよ!」


「昨日、二杯目を頼んで断られたら泣いたじゃない」


「泣いてないし、クソ!」


「モチ、泣いてた?」


モチは、一晩中あたしの頭の上で寝てたやつが、完全に「うん、しかも見苦しかった」って翻訳できる音を出した。


水を黙って飲んで、冷たくて計算高い利子付きの復讐を誓った。


食後、ジロが将軍が侵攻を発表するみたいな真剣さで立ち上がった。


「空中偵察に行ってくる」


「あんたが?」


あたしは聞いた。


「俺は班の斥候だ。公式な役職だ。契約書に書いてある」


「昨日タラによじ登ってたじゃん、怯えた猫みたいに」


「あれは自己保存の本能的反応だ!」


「臆病の間違いでしょ」


「戦術的慎重さだ!」


彼は口笛を吹いた。石の上から、錆色の羽と、世界中から謝罪されるべきだと思ってるような永遠に不機嫌な目をした巨大な鳥が降りてきた。翼を広げれば野営地の半分を覆う。名前はクイクイって言って、彼女は吟遊詩人があたしに付けた「伝説の」ってあだ名と同じくらい、その名前が嫌いだった。


「クイクイ、かわい子ちゃん」


ジロは、無理矢理な親しみを込めて嘴を撫でながら言った。


「ロマンチックな散歩に行こう」


クイクイは、動き出した腐った皿でも見るみたいに彼を見た。それから諦めて、もう人生に期待するのをやめた者のため息をついて、彼が登れるように首を下げた。


二人は飛び立った。円を描いてどんどん高く上がって、黒い山を背景に黒い点になるまで小さくなった。


「どのくらい上持ちこたえると思う?」


サイが、もう時間を測りながら聞いた。


「五分」


あたしは答えた。


「二分に賭ける。あと銀貨一枚、叫びながら帰ってくるのに賭ける」


ほぼ当たった。


ジロは四分半で帰ってきた。鳥は適当に着陸して、石の上で滑って、彼のブーツは本当に煙を上げてた。

石に崩れ落ちて、震えて、瞼を白目全部とさらにもう少し見えるくらい見開いてた。


「頂上が……変わった。クソ、めちゃくちゃ変わった」


「どう変わったの?」


「巡礼者が使ってた道がなくなってる。消えた。亀裂が至る所にあって、そいつらが……光ってる。血管みたいに。山の中に光る血管があるみたいなんだ。岩に降りてよく見ようとしたら足が焼けた。足が!」


「見えるわ」


サイが、煙を上げるブーツを会計的興味で指さして言った。


「弁償ね」


「穴は?」


あたしは聞いた。声が低くなった。


「あたしが子供の頃落ちた穴」


ジロは唾を飲み込んだ。今度の恐怖は種類が違った。


「ある。でかくなってる。すごくでかくなってる。開いてるよ、ハザエ。そして熱い空気が出てくる。波みたいに。定期的に」


「定期的に?」


「なんていうか……呼吸みたいに。吸って、吐いて。吸って、吐いて。何かが中で長い間寝てて、今あんたの夢見たみたいに」


一瞬、誰も何も言わなかった。風さえ止まった。


「完璧ね」


サイが、ついに請求書の残酷さで空気を破って言った。


「予算に新たな項目ね。ジロの新しいブーツ。溶岩耐性の革の」


「言いたいことそれだけなの?」


信じられないって顔で聞いた。


「あとはロープ。大量のロープ。あとプランBとCとDも」


---


登りは一日がかりで、一週間みたいに感じた。


レンが先頭を歩いて、誰にも見えない地面の印を読んでた。石の細い引っかき傷が文字みたいに見えたり、煤の染みが模様になったり、灰が彼にしかわからない図形に積もってたりするやつを。

タラがすぐ後ろに来て、荷物と盾と、急なところではリュックにぶら下がったアクセサリーとしてのジロを運んでた。

サイが真ん中で、巻物に水場と亀裂と、足を置くには熱すぎる場所を書き込んでた。

あたしが最後尾で、肩にモチを乗せて、汗を背中から、額から、魂から流してた。


ヴァレンフォートの寒い平原ではあんなに役に立った化け物の皮の服が、今や脚の生えた持ち運び式オーブンだった。

昼過ぎに上着を脱いで腰に巻いた。一時間後にベストも脱いだ。

薄い麻のシャツ一枚が体に張り付いただけになった時、サイが上から下まであたしを見た。


「焼けたら弁償ね」


「焼けないよ」


「シャツの話よ。シルソーン産の輸入麻よ」


モチは逆に天国にいた。見つけるたびに熱い石から降りて、日向の絨毯の上の猫みたいに擦り寄って、喉をゴロゴロ鳴らして、鼻先に火花を付けて誇らしげに戻ってきた。

レンは何も言わずに、小さな燻り石を道に残してやって、雛は幸せそうに、ヘンゼルとグレーテルがパンを追いかけるみたいにそれを追いかけてた。


「太ったわね」


タラが突然言った。二日ぶりに聞いた声だった。低い唸るみたいな呟きだった。


「成長してるんだよ」


訂正した。


「でかくなるわ」


彼女は言った。そこには不意を突かれるような愛情があった。


「それは後で決める。あたしの前髪燃やさないの覚えてから」


登るにつれて、空気は重くて濃くなった。石はブーツの下で文句を言うみたいにパチパチ言った。いくつかの亀裂では奥でマグマがオレンジ色に沸騰してるのが見えた。口を開けて待ってるみたいに。

背中のカダヴァルは変に静かだった。でも寝てない。注意してるのがわかった。嵐を嗅ぎつけた犬みたいに、張り詰めて、警戒して。


夕方、太陽が煙の向こうに赤い線になった頃、レンが手を上げた。乾いた動きで。言葉なしで。


止まった。


東側の斜面の、風が届かない黒い岩の台地にいた。目の前に、二十歩くらいの幅の穴が地面に開いてた。そこから景色が揺らぐくらい熱い空気が上がってた。そして定期的に、深いため息みたいなものが底から出てきて、細かい灰を舞い上げて、温度を一気に上げた。


あたしはその場所を知ってた。


視覚的な記憶でじゃない。あの穴はもっと大きくて、不規則で、縁は溶けて所々光ってた。でも匂いでわかった。硫黄と焼けた石と、もう一つ、十二歳のあたしの体が決して忘れなかった何かの匂いが。鼻と胃に刻まれたやつだ。


あの穴だ。


あたしが落ちた穴だ。


心臓が跳ねた。一歩前に出た。自動的に。山に呼ばれたみたいに。


『今日じゃないわ』


足が止まった。カダヴァルの声は固かった。提案じゃない。命令だった。


『なんで?』


『まだ寝てるからよ。そしてあなたが準備できるまでそうしててほしいの』


『どんな準備? 準備できてるよ! いつもできてる!』


『仲間と。作戦と。喉に詰まった悔しさで急ぐんじゃなくて。あなたはここに怖がって落ちたの。怒りを抱えて戻らないで』


黙った。カダヴァルが本気の心配みたいな命令をくれたのは初めてだった。挑発じゃなくて。そしてそれが、穴より怖かった。


「ハザエ?」


後ろで、サイがいつもより低い声で呼んだ。


深呼吸した。空気が焼けた。


「ここで野営する」


穴に背を向けるのに物理的な努力が要ったけど、振り返って言った。


「縁から一番遠くで。でも見えるとこで。レン、巨人の痕跡を見つけてほしい。どこで寝てるのか、どう動くのか、いつ呼吸して、いつ呼吸しないのか」


レンが一度頷いた。


「何日か」


「何日?」


「何日か。もしかしたら一週間。あいつはあまり動かない。でも動く時は……」


「じゃあ一週間ある」


サイが巻物を上げた。苦しみを表計算に変える時に光る危険な目付きで。


「つまり予算を組み直して棚卸しして、火山危険手当を請求する時間があるってことね」


「あんた達全員大嫌い」


力なく言った。


「あとロープもっと必要ね」


サイは容赦なかった。


モチは、穴の足元で、人間と地質学のドラマ全部を無視して、梅くらいの大きさの燻り石を拾って、音を立てて噛んで、飲み込んで、青い火花のゲップをして、それが錆色の空に向かって上がって消えた。


あたしは、煙の向こうに太陽が落ちていく火山を見て、これが人生で一番長い一週間になるだろうと思った。


正しかった。そしてまだ始まってもいなかった。


第六章・終

ここまで読んでいただきありがとうございます!


作者X : @Sora_no_TENKAI


代表作『Tenkai』は完結まで毎日投稿中です。

本作は毎週水曜・土曜22時更新です。


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次回もお楽しみに!

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