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84話 妹の誕生日

学校からの帰り道、夕陽が街並みを赤く染める中、直哉が不意に思い出したように俺の顔を覗き込んできた。


「なぁ、西条。お前、誕生日っていつなんだ?」


「9月だけど」


「……? お前の両親、クリスマスだな?」


「……? ッッッ、おい!!」


一瞬考えて意味を理解した俺は、思わず大声を上げて直哉の肩を小突き直した。直哉は腹を抱えて大爆笑している。


「ははは! まぁ気にするな! ちなみに俺は2月だからな。で、9月のいつなんだよ?」


「……今日」


「はあ!? マジかよ!!」


直哉が通りの中央で素で叫び、足をピタッと止めた。


「おいおい、なんで言わねぇんだよ! 今日は何も用意してねぇぞ……! 明日ちゃんと準備するから、マジでスマン!」


「いや、俺も自分から言うようなことでもないと思って言わなかっただけだから。気にすんなって」


「そうか……! よし、明日は期待してろよな!」


直哉と別れ、俺は苦笑いしながら自宅の玄関扉を開けた。


「兄さん!」


ドアを開けた瞬間、パッと花が咲いたような笑顔で忍が出迎えてくれた。両手を後ろに回し、どこかわくわくした様子で俺を見上げてくる。


「?」


「お誕生日、おめでとうございます!」


「おう、ありがとうな、忍」


我が妹ながら、完璧なタイミングだ。居間に入ると、テーブルの上には可愛らしくデコレーションされたホールケーキが鎮座していた。


「ケーキ、準備しました! 今回も全部手作りですよ?」


「毎年本当にありがとうな。忍の作るケーキが一番うまいよ」


「いえいえ! 兄さんのためですから、これくらい当然です!」


えへへ、と嬉しそうに鼻を鳴らす忍の頭を優しく撫でてやる。


「そういえば……忍の誕生日も、そろそろだったよな。ちゃんとお祝いしないとな」


「ふふ、期待してますよ? 兄さんからのプレゼントなら、何でも嬉しいですけれど♪」


そう言って可愛らしく微笑む忍。


……だが、俺はケーキのローソクに火をつけながら、ふと頭の隅で小さな違和感を覚えていた。


(そういえば……忍の誕生日って、一体いつだったか……?)


目の前で嬉しそうにイチゴを頬張る妹の笑顔を見つめながら、俺は一瞬だけ、胸の奥に小さな引っかかりを覚えるのだった。



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