81話 初めての12階層
「なぁ葛西、どうする? 今日」
「? 行くのか?」
「おう。担任から12階層までの探索許可が出たしな」
「よし! 王城には悪いが、俺たちだけで行くか!」
放課後、俺と直哉は装備を整えて校門を出た。その直後——。
「あっ! 後輩く〜ん!」
「先輩?」
「陽向先輩、こんにちは!」
「うん! こんにちは。後輩君、一緒に帰ろう?」
「すみません先輩、俺これからダンジョンに行くんですよ」
「? なら私も行くよ〜!」
「えっ?」
「本当ですか、陽向先輩! 先輩がいれば回復してもらえるぜ! なぁ、西条!」
「そうだな。心強いです、よろしくお願いします」
「は〜い♪」
こうして陽向先輩を加えた三人でダンジョンへ潜った俺たちだったが、12階層に足を踏み入れた瞬間に現実の厳しさを味わうことになった。
「クソーッ! 担任が『10階層で止めろ』って言った意味が分かったぜ……暑すぎる! しかもあの炎を纏った犬、攻撃がしつこい!」
「本当だな。葛西、火傷の怪我を先輩に治してもらえよ」
「はい〜、直哉君。怪我見せて?」
陽向先輩がそっと手をかざすと、温かな光とともに直哉の腕の火傷が一瞬で綺麗に塞がった。
「すげー! 陽向先輩、ありがとうございます!!」
「どういたしまして、えへへ〜」
治療を終えた陽向先輩は、そのままくるりと向き直り、俺に抱きついてきた。
ぎゅ〜っ!
「っ……ちょっ、先輩! 俺、今めちゃくちゃ汗臭いですから離れてください!」
「後輩君……? スンスン……ううん、すごくいい匂いだよ? 美味しそうな……」
「ちょっ、本当に離れて——」
ペロッ。
「ッッッ……!?」
首筋に走った柔らかく湿った感触に、背筋がゾクリと震えた。
「えへへ〜、やっぱり美味しい!」
「はぁ……」
「……先輩、ダンジョンで何してるんですか」
「えへへ〜?」
「褒めてませんからね……」
結局、その日は12階層の半ばまで進んだところで、消耗を考えて引き返すことになった。




