表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/36

9話 兄さん……濃いです

「兄さん……濃いです……えへへ……」


耳元で聞こえる甘ったるい吐息と、胸元に感じる柔らかい温もりで目が覚めた。


「おい、忍……はぁ……ベッドに潜り込むなよ……」


体を起こそうとするが、全身が重く、妙なだるさが残っている。


(おかしいな……。毎朝、忍がベッドに入ってくるとなぜか少し気だるい……。何かされてるのか……?)


そんな疑問が頭をかすめるが、寝ぼけた頭では深い思考に至らない。


俺が重い身体を擦りながらベッド端に腰掛けると、忍はパッと顔を輝かせて身を起こした。


「あっ! 起きましたか、兄さん? もうご飯できてますよ!」


「……おう」


リビングへ移動し、忍が作った朝食を口に運ぶ。


相変わらず味噌汁の出汁の取り方から何から完璧で、本当に手際が良い妹だ。


「そういえば兄さん、昨日葛西さんとお話しましたよ。とってもいい人ですね?」


「そうだろ? チャラチャラしてるが、根はいい奴なんだ」


「ふふ、ええ……とても」


忍は目を細め、どこか意味深な笑みを浮かべた。


一瞬だけその瞳の奥に冷ややかな光が宿った気がして、俺は手を止める。


「……?」


「あ、そうだ兄さん。これ、渡しておきますね?」


忍がポケットから取り出したのは、見たこともない複雑な紋様が薄く描かれた、小さな和紙のお守りのような紙だった。


「紙……?」


「はい。絶対にお守りになりますから……肌身離さず持っていてくださいね?」


そう言って忍は、俺の手を両手で優しく包み込み、紙を固く握らせてきた。


その手はどこか微かに震えているようでもあり、必死な思いが伝わってくる。


「……わかった。大事にするよ」


「はい! ふふ、良かったです」


安心したように花が咲くような笑顔を見せる忍。


俺はその紙をポケットの奥深くへと仕舞い込み、残りの朝食を平らげた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ