幕間 ダンジョン実習の記録2
二人は言葉数こそ少ないものの、不思議なほど噛み合いながらダンジョンの深層へと進んでいた。
「ねえ……疲れないの?」
休息地点の安全地帯に入り、静香が息を整えながら尋ねる。
何階層分もの魔物を一人で倒し続けているというのに、教官の息は乱れるどころか、汗ひとつかいていない。
「……? ああ、まぁな。……お前は寝ろ」
素っ気なく返すと、彼は武器の手入れを黙々と始めた。
相変わらずの無愛想さだったが、静香はふっと口元を緩めた。
「そう……なら、遠慮なく休ませてもらうわね」
静香は壁に背を預け、短い睡眠で体力を回復させた。
「さて……ボスだが、俺と協力して倒してもらう。いいか?」
「ええ、準備はできているわ」
「行くぞ」
重厚な扉の先、広大なボスルームに鎮座していたのは、巨体誇る巨大蠍——「デビルスコーピオン」だった。
「こいつは毒を持っている。刺されたら致命的だ。分かったか?」
「ええ」
静香は頷くと、先手を取って集中させた魔力を指先から放った。
パチンッ! と空気のはじける音が響き、高速の魔力弾がスコーピオンの甲殻を撃ち抜く。
「……効いているみたいね!」
手応えを感じた瞬間、巨躯の蠍が地鳴りを立ててこちらへ突進してきた。凶悪なハサミが静香の身体を真っ二つにせんと迫る。
(このスピードなら……かわせる!)
静香が最小限の動きで回避行動を取ろうとした、その刹那。
ガシッ!
「……ッ!?」
回避の瞬間にハサミが不自然に開き、その中心部から眩いばかりの閃光が放たれた。
隠された閃光の罠。
不意を突かれた静香の視界が、一瞬で真っ白に染まり、激痛とともに奪われる。
(目が……焼かれる……っ!?)
毒針の追撃が迫る死の直前、視界を失った静香の身体は、誰かの強い力によって猛烈な勢いで横へと突き飛ばされていた。




